がんとつきあう(がん治療の副作用)下痢の対処法

下痢による症状を緩和するための工夫

下痢を起こしてしまっても、対応次第で症状を緩和できることがあります。以下に、食事や排便時など身近な生活においてあなた自身でできる、下痢による症状を緩和するための工夫をご紹介します。

食事のとり方について

食事のとり方や内容については、医師や看護師、管理栄養士などの医療スタッフにも相談しましょう。

水分や電解質を摂取しましょう

下痢が続くと、水分とともにナトリウムやカリウムなどの電解質も奪われるため、水分や電解質のこまめな補給が必要です※1,2。水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンク、スープ、みそ汁、果汁などから、その時に飲みたいもの、飲めるものを選び※1、効果的に水分と栄養素を補給しましょう。

下痢の症状が重いときは無理に食べない

下痢の症状が強く出ている時期や重度の下痢の場合、一時的に食事を控えて腸管を休めることを試みることがあります※3。症状の改善状況に合わせて、流動食やお粥などの消化しやすい食事を少量ずつ再開していきます※3

食事は体の状況に合わせて

食事は一日3食と決めずに、体の状況を見ながら一回の食事量を減らして回数を増やし、消化器系への負担を少なくしながら※4、必要な水分や栄養を摂取することが重要です。

体がつらいときは我慢しない

体がつらくて飲み物でさえ飲むことが難しい場合、我慢せずに医療機関に相談してください※1

食事の内容について

下痢は体内から多くの水分とミネラルを奪い、脱水状態を引き起こすことがあります※1。それを防ぐために、以下の栄養素や食品を積極的に摂取しましょう。

積極的に摂取したい栄養素や食品
カリウムを多く含む食品を摂取しましょう※4, 5 スポーツドリンク※4、経口補水液※4、バナナ※5、納豆※5など
水分だけでなく、ミネラルも補給できる食品を選びましょう※4 スープ※4、スポーツドリンク※4、経口補水液※4など
ペクチンなどの水溶性食物繊維は腸内環境を整えてくれます※4 果物類(キウイフルーツ、りんご、いちご、みかんなど)、筋の少ない野菜(にんじん、ほうれん草、かぼちゃなど)、いも類、海藻類、こんにゃくなど※4
タンパク質は傷ついた粘膜を修復してくれます※5 卵、豆腐、タラなど※5

積極的に摂取すべき食品がある一方で、避けたほうが良い食品・食事もあります。香辛料を多く使った味付け・濃い味付け※4、冷たすぎるもの・熱すぎるもの※4、揚げ物など脂肪の多い食品※4、食物繊維が多く固い食品※4、カフェイン※4、アルコール※4、冷たい牛乳※4、炭酸飲料※4などは、消化器系に刺激を与える可能性があるので、摂取は控えてください。また、タバコもできるだけ避けるようにしてください※4

下痢が治ってきたら

下痢が治ってきたら、症状の改善に合わせて、固形物のない流動食やお粥などの消化しやすい食事から、少量ずつ再開していきます※3。なお、こうした食品の摂取開始については、医療スタッフと十分に相談してください。

肛門の不快感を緩和するには

下痢は腹痛や脱水状態を引き起こすだけでなく、肛門に不快感をもたらすことも多々あります※1。しかし、以下のような日常生活の工夫によって軽減できる場合もありますので、参考にしてください。

  • 刺激を軽減するため、排便後は肛門部を何度もこすらずに押さえ拭きする※4
  • 洗うときは低刺激の石鹸を使用する※4
  • 撥水クリームやオイルで便と皮膚の接触を少なくする※4
  • 温水洗浄便座は、皮脂を取りすぎない低温・低圧で使用し、過度の使用に注意する※4

お薬の服用について

下痢を緩和するお薬を服用する場合も、事前に医療スタッフに相談してください。下痢の治療には、原因に応じていろいろなお薬が使われます※1。自己判断で服用することはやめましょう。

これらを参考にして、あなたにとって最善の対策や治療法を見つけられるよう医療スタッフと相談しながら対処していきましょう。

※1 国立がん研究センター がん情報サービス 下痢 もっと詳しく ~がんの治療を始める人に、始めた人に~
https://ganjoho.jp/public/support/condition/diarrhea/ld01.html 2023/2/20参照

※2 がん研究振興財団 「がん治療中の食事サポートブック2023」
https://www.fpcr.or.jp/data_files/view/222/mode:inline 2023/2/20参照

※3 がん研究振興財団 「多職種から学ぶ:がん看護の基礎(食事を支えるケア編)」
https://www.fpcr.or.jp/data_files/view/46/mode:inline 2023/2/20参照

※4 ≪がん看護実践ガイド≫病態・治療をふまえたがん患者の排便ケア. 監修; 日本がん看護学会, 医学書院, 2016年9月, 東京.

※5 一生役立つ きちんとわかる栄養学. 監修; 飯田薫子, 寺本あい, 西東社, 2019年7月, 東京.

【監修】帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科 渡邊清高 先生

更新年月:2023年11月

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