がんとつきあう(がん治療の副作用)皮膚障害の症状
手足症候群、皮疹(ひしん)、色素沈着、皮膚の乾燥、アレルギー、爪の変化など

抗がん剤(化学療法)や分子標的薬の副作用のひとつに皮膚障害があります※1。代表的な皮膚障害として、手足症候群が挙げられます※2

手足症候群

手足症候群は抗がん剤(化学療法)や分子標的薬による副作用のひとつで、手のひらや足の裏に次のような症状が現れます。

手足症候群に見られる主な症状※2

両手
  • しびれ
  • チクチク、ピリピリした痛み
  • むくみ
  • 赤み(発赤・紅斑)
  • 色素沈着
  • 皮膚のガサガサ(皮膚が厚く、硬くなる)
  • ひび割れ
  • 水疱(水ぶくれ)

手のひらや足の裏のように、体重や力のかかりやすい部分や摩擦が生じやすい部分に多く発症します※2。重症化すると強い痛みを伴ったり、水疱やびらんができたりして、歩きづらくなり、日常生活に支障を来すこともあります※2

手足症候群の症状は、水仕事による手荒れや水虫などの症状と似ていますので、見逃さないよう注意が必要です※2。抗がん剤(化学療法)や分子標的薬による治療開始前の手足の状態をよく観察しておき、気になる症状が出たときは医療スタッフに相談しましょう※2

その他の症状

抗がん剤(化学療法)や分子標的薬による副作用として、手足症候群のほかに、次のような症状が見られることがあります。

皮疹(ひしん)

皮膚に現れるさまざまな病変を皮疹と言います※3。特徴的な皮疹としては、分子標的薬の副作用で見られる、ニキビに似た「ざ瘡様皮疹(ざそうようひしん)」があります※4。頭皮、首、胸、背中などに現れ、かゆみや痛みを伴うこともあります※5

色素沈着

色素沈着は、皮膚内のメラニンが増えることで起こり※4、皮膚が黒ずんだり、顔のシミが増えたりします※5。色素沈着は手のひら、足の裏、爪、頭、口の中の粘膜などに現れることがあります※4

皮膚の乾燥

皮膚が乾燥すると、肌荒れや肌の赤みが生じます※6。ひどい場合には、痛みを伴ったりひび割れや出血につながったりすることもあります※6

アレルギー

抗がん剤(化学療法)や分子標的薬の投与によって、じんま疹や皮膚のかゆみなどのアレルギー反応が起こることがあります※7。ひどい場合はアナフィラキシーと言って、命に関わるアレルギー反応が起こることもあります※7。特に、お薬が体に入った後、30分以内にアレルギー反応が起こりやすいので※7、ご自身の体に何か変化が起こっていないか注意深く様子をみてください。

爪の変化

爪にも以下のような症状が現れることがあります※8

  • 爪の色の変化
  • 爪の変形
  • 爪が薄くなる
  • 爪の割れ

また、爪の周りが赤く腫れる、化膿する、ひどい場合には爪がはがれ落ちることもあります※4

治療に用いる薬剤の種類によって、起こりうる皮膚障害による症状が異なるため、がん治療医に加え、皮膚科の医師の診察や皮膚ケアを担当する看護師の支援を得ながら、予防や日々のケア(保湿や清潔の維持など)を行っていくことになります。手足症候群やその他の皮膚症状が現れたら、がん治療継続のためにも、まずは主治医に相談してください。そして、主治医から皮膚科受診を促されたら、速やかに皮膚科を受診するようにしましょう※4

※1 がん化学療法副作用対策ハンドブック 第3版, 編集; 岡元るみ子, 佐々木常雄, 羊土社, 2019月11月, 東京.

※2 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群 平成22年3月(令和元年9月改定)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1q01_r01.pdf 2023/4/19参照

※3 あたらしい皮膚科学 第3版, 清水 宏, 中山書店, 2018年2月, 東京.

※4 がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版, 日本がんサポーティブケア学会 編, 金原出版, 2021年10月, 東京.

※5 American Society of Clinical Oncology Educational Book. 2020: 40: 485-500.
https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/EDBK_289911 2023/4/21参照

※6 アメリカがん協会「Dry Skin」
https://www.cancer.org/treatment/treatments-and-side-effects/physical-side-effects/hair-skin-nails/dry-skin.html 2023/4/19参照

※7 国立がん研究センターに学ぶ がん薬物療法看護スキルアップ, 編集; 国立がん研究センター看護部, 南江堂, 2018年2月, 東京.

※8 国立がん研究センター中央病院 化学療法中の爪の変色・変形への対処法
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/nursing/power/010/090/index.html 2023/4/28参照

【監修】帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科 渡邊清高 先生

更新年月:2023年11月

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