慢性骨髄性白血病(CML)を学ぶ治療法

薬物療法での治療目標は何ですか?

これまで慢性骨髄性白血病(CML)の治療目標は、白血病細胞を可能な限り減らし、慢性期を維持して移行期や急性転化期へ進行させないことでしたが、分子標的薬が登場したことで、より多くの患者さんが寛解状態を長期間持続できるようになりました。その結果、現在の治療目標は、薬を中止した後も寛解状態を持続させることに変わりつつあります1)

効果判定の基準

慢性骨髄性白血病(CML)の治療効果は、血液学的奏効(HR)、細胞遺伝学的奏効(CyR)、分子遺伝学的奏効(MR)により判定されます2)

血液学的奏効(HR)

血液や骨髄の検査と臨床症状(脾腫の消失など)によって判定されます。
判定基準は、慢性期では血液学的完全奏効(CHR)、進行期(移行期+急性期)ではCHRと白血病の所見なし(NEL)の2つがあります2)

■慢性期CMLにおける血液学的完全奏効(CHR)の定義

  • 白血球数が10,000/μL未満
  • 血小板数が450,000/μL未満
  • 末梢血中に芽球と前骨髄球なし
  • 末梢血中の骨髄球と後骨髄球の合計が0%
  • 好塩基球が5%未満
  • 脾臓と肝臓の腫れなし、骨髄以外の病変なし

■進行期(移行期+急性期)CMLにおける血液学的完全奏効(CHR)の定義

  • 白血球数が施設基準値の上限以下
  • 好中球数が1,000/μL以上
  • 血小板数が100,000/μL以上
  • 末梢血中に芽球と前骨髄球なし
  • 骨髄中の芽球が5%以下
  • 末梢血中の骨髄球と後骨髄球の合計が5%未満
  • 好塩基球が20%未満
  • 脾臓と肝臓の腫れなし、骨髄以外の病変なし

細胞遺伝学的奏効(CyR)

骨髄細胞中のフィラデルフィア(Ph)染色体陽性率で判定されます。
主な判定基準は、フィラデルフィア(Ph)染色体が完全に消失(陽性率0%)した状態である細胞学的完全奏効(CCyR)、陽性率が0~35%の細胞遺伝学的大奏効(MCyR)です2)

分子遺伝学的奏効(MR)

末梢血中のBCR-ABL1遺伝子量の割合によって分子遺伝学的大奏効(MMR)と分子遺伝学的に深い奏効(DMR)があります。DMRには遺伝子量の割合が異なる3つのレベルがあります2)

  • 分子遺伝学的大奏効(MMR)
    BCR-ABL1遺伝子量の割合が0.1%以下
  • 分子遺伝学的に深い奏効(DMR)
    MR4.0BCR-ABL1遺伝子量の割合が0.01%以下
    MR4.5BCR-ABL1遺伝子量の割合が0.0032%以下
    MR5.0BCR-ABL1遺伝子量の割合が0.0001%以下

【出典】

1) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版 金原出版:94, 2020

2) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版 金原出版:90, 2020

【監修】東北大学大学院医学系研究科 血液・免疫病学分野(血液・免疫科)教授 張替秀郎 先生

更新年月:2022年11月

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