肺がんを学ぶ治療法の選択 / 治療方針を決める因子

肺がんの治療法の選択治療方針を決める因子

肺がんの治療では、効果的な治療法を選択するために、主に肺がんの種類(組織型)や遺伝子の型、がんの広がり方(病期、ステージ)に基づいて治療法を決めますが、それだけではなく、がんのある場所や、患者さんの体力、治療への希望、心臓や肺の機能なども総合的に検討して治療法を選択します。

肺がんの種類

肺がんの治療は、組織型によっても異なります。腺がん、扁平上皮へんぺいじょうひがん、大細胞がんでは手術が優先され、小細胞がんでは放射線療法と化学療法が優先されます。効果的な治療法を選択するためにも、がんの組織型を確かめることはとても重要なことです。

肺がんの遺伝子の型

従来の抗がん剤は、がん細胞だけでなく、正常な細胞も含めて分裂・増殖が盛んな細胞を殺すものでした。しかし近年では、がん細胞で特に目立った働きをする分子(タンパク質など)に狙いを定めた「分子標的治療薬」による治療も行われています。

分子標的治療薬は、特定の分子を持った患者さんには優れた効果を発揮します。しかし、分子を持っていない患者さんに使用すると、効果がないばかりか腫瘍の増大を引き起こす可能性もあります。

特定の分子は特定の遺伝子から作られるため、特定の分子を持っているかどうかはがんの遺伝子を調べることでわかります。分子標的治療を行う場合には、遺伝子検査を行って、標的となる分子を持っているかどうかを事前に調べる必要があります。

肺がんの病期(TNM分類)

肺がんの進行度合いの評価にはTNM分類と呼ばれる分類法を使用します。これは、「がんの大きさと浸潤」を示すT因子、「リンパ節転移」を示すN因子、「遠隔転移」を示すM因子の3つの因子について評価するもので、これらを組み合わせてがんの進行度合い(病期)を決定します。

病期はⅠ~Ⅳ期に分類され、患者さんの状態をふまえて治療法が選択されます。たとえば、非小細胞がんのⅠ~Ⅱ期であれば手術が主な治療法として選択されます。手術後の病期(術後病期といいます)に応じて、抗がん剤による薬物療法がすすめられます。また、ⅢA期やⅢB期になると抗がん剤による薬物療法と放射線療法が、Ⅳ期の患者さんでは薬物療法が標準的治療法としてすすめられています。

肺がんの病期についての詳しい説明は、関連リンクをご覧ください。※Ⅰ~Ⅳ期は、ステージ1~4と呼ばれることもあります。

全身状態(PS:パフォーマンスステータス)

患者さんの全身状態は、治療の効果や副作用のあらわれやすさに影響を与えます。全身状態の評価にはいくつかの方法が用いられていますが、治療の決定には、症状や日常生活への影響を評価するECOG PSという評価項目がよく使われています。

全身状態が悪い(ECOG PSの値が大きい)患者さんでは、予定していた治療を途中で中止する必要がでてきたり、重い副作用があらわれたりしやすいことが知られているため、体への負担の大きい外科療法や薬物療法は行えないことがあります。

ECOG PS 定義
0 全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。
例:軽い家事、事務作業
2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごしている。
3 限られた自分の身の回りのことしかできない。
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごしている。
4 ほとんど寝たきりの状態で、
自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごしている。

心臓、肺、肝臓、腎臓などの状態

肺がんの外科療法では、肺の一部を切除するため、手術前と比べて呼吸機能が低下します。そのため、治療を行う前に肺の働き(機能)について調べておくことがとても重要です。また、手術や薬物療法では肺のほかにも心臓や肝臓、腎臓などに負担がかかるため、治療に耐えられるかどうかについても調べておく必要があります。

【監修】日本医科大学付属病院 がん診療センター長 教授 久保田 馨先生

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