不安を受け止める心の負担を軽くするために

がんになると、治療のことだけでなく、闘病中の生活への影響が気になります。働いている人なら、仕事への影響が一番気になるでしょうから、休職した方が良いのかも含めて、詳しく質問しておきましょう。子どもがいる人は、子どもの学校行事などさまざまな都合があるはずです。

がんにかかったからといって、何もかもを諦める必要はありません。「子どもの結婚式が控えているから、入院はそのあとにしたい」、「孫が産まれる予定なので、無事に産まれたことを見届けてから手術を受けたい」など、治療の緊急性と、個人の生活とのバランスを上手にとっていくためにも、自分のやりたいこと、やらなければならないことがある場合は、積極的に医師や看護師に知らせましょう。ただし、命に関わるような緊急の場合は、無理を言わずに医師のアドバイスに従いましょう。

また、がんの治療のため、周囲に自分の役割を一時的に代わってもらわなければならない場面が出てくるかもしれません。自分にできないことは、どんどん周囲に手伝ってもらいましょう。「迷惑をかけて申し訳ない」と思うこともあるでしょうが、今助けてもらったぶん、いずれ何らかの形で自分が役に立てることが必ずあるのですから、甘えられるときは甘えてしまって構いません。

頼る人がいない方は、公的機関を利用したり医療者に相談するのも良いでしょう。お世話になった人に直接お返しできなかったとしても、感謝の気持ちを持って、困っている誰かの役に立てば良いのです。そうすることで、人と人との温かい関係が広がっていくのです。つらいときはひとりで抱え込まない、がんばりすぎないことを心がけましょう。

どうしても気分の落ち込みが激しく、食欲がない、眠れない、何をする気も起こらないなどの状態が続くようなら、精神科・心療内科で専門的な治療を受けた方が良い場合もあります。最近では「精神腫瘍科医」といって、がん患者さんの心のケアを専門に行なう医師も少しずつ増えてきました。それだけ、がんにかかったときは精神的なケアが必要だということです。今後、治療を進めていく過程で、さらに気分の落ち込みを経験することもあるかもしれません。気分の落ち込みがあまりに激しいときは、早めに専門家に相談することが大切です。

がん患者がたどる心のプロセス

第一段階衝撃と否定・絶望の時期
がん告知や再発、転移の診断を受けたとき、患者さんはショックのあまり診断結果を認めようとせず、「何かの間違いでは?」と否定します。このとき、まるで現実ではないような無感覚に陥りますが、これは心理的に距離を置いて危機を遠ざけようとする、自己防衛の働きと考えられています。
第二段階抑うつ、心身に異変に気付く時期
最初のおよそ1週間が過ぎると、今度は物事に集中できない、眠れない、食欲がないなどの心身の変調に気付き始めます。「なぜ自分だけが、こんな目に合わなければいけないのか」という怒りや孤独感にさいなまれ、不安と悲しみにおそわれます。
第三段階再適応、立ち直りの時期
さらに約2週間後には、気持ちが少しずつ落ち着き、普段の自分を取り戻すことができるようになります。がんにかかったことを受け入れ、がんに立ち向かっていこうという気持ちに切り替わるのです。この段階に達すると、がんの情報を集めたり、同じ体験をした人に話を聞いてみようと動き始めることができるようになってきます。ここまでたどりつけば、ほとんどの人は、がんとともに生きていく心の準備が整います。

*必ずしも順番どおりではなく一日の間でも変化しますし個人差があります。このような反応は人が生きていくために必要な心のプロセスなのです。

【参考文献】「女性のがん 心のケア」大西秀樹著 2008年 土屋書店
【監修】聖路加国際病院 緩和ケア病棟 ブレストセンター オンコロジーセンター ナースマネージャー 玉橋容子氏

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