原発乳がんの治療治療の流れ

原発乳がんは、乳房の細胞ががん化して発生したものをいいます。原発乳がんの治療法には、「手術」、「放射線療法」、「薬物療法」があります。

手術と放射線療法は、乳房内にあるがん細胞に対して行われる治療法で、治療を行った部分にだけ効果が期待できる「局所治療」です。一方、薬物療法は乳房以外の組織や臓器にも存在する可能性のあるがん細胞(微小転移)に対して行われるもので、「全身治療」として位置づけられます。

乳がんの治療法の決定※1,※2

乳がんの治療は、手術、放射線療法、薬物療法の中から、個々の患者さんの状態に合ったものを選び、組み合わせて行います。

治療法を選択するにあたって、医師は、乳がんの病期(進行度合い)はどの程度か(非浸潤がんか浸潤がんか、がんの大きさはどれくらいか、リンパ節転移はあるか)や、どのようなサブタイプ(がん細胞の性質)かなどについて、さまざまな情報を収集します。こうした情報にもとづいて、医師と相談しながら、個々の患者さんに最も適した治療内容が決定されます。

ゆとりをもって治療にのぞめるよう、治療の大まかな流れを把握しておきましょう。

図内の各治療法をクリックすると、詳細な説明ページへジャンプします。

※1【出典】日本乳癌学会編: 乳腺腫瘍学 第2版 金原出版: 73, 2016
※2【出典】日本乳癌学会編: 乳腺腫瘍学 第2版 金原出版: 145, 2016より作成

原発乳がんに対する病期別の一般的な治療方針は以下の通りです。

非浸潤がん(0期)の治療※3

がんが小さい場合には、乳房温存手術あるいは乳房温存手術とセンチネルリンパ節生検を行い、術後放射線療法を行います。がんが広い範囲に及んでいる場合には、乳房全切除術を行います。また、必要に応じて薬物療法を行います。

浸潤がん(Ⅰ~ⅢA期)の治療※3,4,5

がんが小さい場合には、乳房温存手術と術後放射線療法を行います。また、必要に応じて薬物療法を行います。

がんが大きく、乳房温存手術が困難である場合には、乳房全切除術と術後薬物療法を行います。一方で、術前薬物療法を行い、がんが小さくなれば、乳房温存手術が可能になる場合もあります。

また、がんの大きさに関わらず、腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)に明らかな転移がない場合には、センチネルリンパ節生検を行います。

手術前に腋窩リンパ節に転移があると診断された場合には、腋窩リンパ節郭清を行います。さらに、センチネルリンパ節に転移が見つかった場合にも、転移の大きさや転移リンパ節の個数などにより、腋窩リンパ節郭清の必要性を考えます。しかし、最近は一定の条件を満たした場合郭清を省略することも可能になってきました。また、腋窩リンパ節転移が認められる場合、乳房全切除術後でも術後放射線療法を行うことがあります。

※3 【出典】 日本乳癌学会編: 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版 治療を受けるにあたって Q15 金原出版: 60-63, 2023

※4 【出典】 日本乳癌学会編: 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版 初期治療についてー手術 Q21 金原出版: 83-85, 2023

※5 【出典】 日本乳癌学会編: 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版 初期治療についてー放射線療法 Q36 金原出版: 133-134, 2023

【監修】相良病院 相良安昭 先生

更新年月:2024年10月

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