肺がんを学ぶ肺がんQ&A

肺がんQ&A肺がんについてよくある質問にお答えします

Q1がんは遺伝するのですか?

A

がんは、私たちが日々生活しているなかで徐々に遺伝子が傷つき、それが蓄積することによって発生します。生まれつき遺伝子に傷があり、がんになる人はごくまれなのです。ただし、家族にがんが多い場合には、遺伝子の傷を修復しにくい体質が遺伝している可能性があります。

また、家族は似たような環境で暮らし、同じような生活習慣を持っていることが多いため、それががんの大きな原因になっていることもあります。
Q2分子標的治療とは何ですか?

A

がんの治療法の1つである薬物療法では、抗がん剤を使って治療を行います。

従来の抗がん剤は「殺細胞性さつさいぼうせい抗がん剤」と呼ばれ、分裂増殖が盛んながん細胞を死滅させる働きをもっています。そのため、さまざまながんに効き目がある一方で、分裂増殖が活発な正常な細胞(血液や毛髪を造る細胞など)に対しても大きな影響を及ぼし、さまざまな副作用を起こす場合があります。

これに対し、新しいタイプの抗がん剤である「分子標的治療薬」は、がん細胞の増殖や転移に関わる分子(タンパク質など)を標的にしたお薬で、この分子を持っている患者さんに効果があり、従来の抗がん剤よりも副作用が少ないことが多いのです

ただし、この分子を持っていない患者さんには効果がありません。遺伝子検査は、この分子を持っているかどうかを調べる検査です。

※正常な細胞の中にもこの分子を持っている細胞があるため、副作用がないわけではなく、治療薬ごとに注意すべき副作用がみられます。
Q3ROS1 融合遺伝子、ALK 融合遺伝子とは何ですか?

A

ROS1 融合遺伝子あるいはALK 遺伝子と他の遺伝子が融合してできた遺伝子で、肺がんの原因となる異常な遺伝子のひとつです。ROS1 融合遺伝子あるいはALK 遺伝子は細胞の増殖に関係する遺伝子で、この遺伝子からできるタンパク質は「細胞を増殖させなさい」という指令を受けると一時的に活性化して、必要な場所に必要なだけ細胞を増殖させます。

しかし、ROS1 融合遺伝子あるいはALK 融合遺伝子は指令がなくても常に活性化してしまうため、この遺伝子を持っている細胞は無秩序に増え続けてしまいます。
Q4遺伝子変異とは何ですか?

A

ヒトの体は約60兆個の細胞でできています。細胞の中には「核」があり、細胞をつくるための設計図である「染色体」が納められています。

染色体は、糸のような「DNA」がヒストンと呼ばれる糸巻きのような分子に巻きついてできていて、DNAには約4万個の遺伝子(遺伝情報)が含まれています。

染色体とDNA

染色体の構造

石川 和宏:基本まるわかり!分子標的薬 南山堂:34, 2011

DNAに含まれる遺伝情報は、A(アデニン)、G(グアシン)、C(シトシン)、T(チミン)という4種類の塩基によって記録され、この並び方が、遺伝情報を伝える暗号となります。

DNAに記録された暗号はRNAによって翻訳・伝達され、この情報に基づいて20種類のアミノ酸が合成されます。アミノ酸はタンパク質の材料で、アミノ酸の並ぶ順番によってタンパク質の形が変わります。

遺伝情報によってできるタンパク質の形

DNAに含まれる遺伝情報


さまざまな理由によって、DNAに異常が起こることがあり、これを「遺伝子変異」と呼びます。遺伝子変異が起こると、正常なタンパク質とは性質が違う異常なタンパク質(分子)がつくられてしまうようになり、これががん細胞の元となります。

驚くべきことに、遺伝子変異は細胞1個あたり、1日に5万回程度起こっているといわれますが、ヒトには遺伝子変異を修復する仕組みがあるため、ほとんどは修復されて元に戻ります。修復できなかったごく一部の異常がいくつも積み重なってしまったときに、がんが引き起こされることがあります。

遺伝子変異の起こり方

遺伝子変異

Q5すでに肺がんの治療を行っていますが、今からでも遺伝子検査を受けることはできますか?

A

遺伝子検査にもとづいた治療は、他の治療を行った後でも効果が期待できます。

ですから、すでに肺がんの治療を行っている患者さんでも遺伝子検査を受ける意義は十分にあります。検査はがんの組織(検体)を使って行いますが、がんの確定診断や組織型を調べるためにとった検体を使うことができます。

以前にとった検体では検査が難しい場合もありますが、そのときにはもう一度がんの細胞や組織をとって検査を行うことも可能です。遺伝子検査を受けてみたいと思ったら、ぜひ担当の医師に相談してください。

なお確定診断を受けた施設と別の施設で現在治療中の患者さんでも、確定診断を行った施設から検体を借りて検査ができる可能性があります。そのようなことも含めて相談されるとよいでしょう。
Q6肺がんはタバコを吸う人の病気だと思っていましたが、吸っていなくても肺がんになることはありますか?

A

はい、残念ながらあります。

タバコの煙には数十種類の発がん性物質が含まれています。喫煙によって、吸っている人はもちろん、周囲の空気も発がん性物質で汚染されてしまいます。

昔のタバコはフィルターの付いていない両切りタバコでしたが、30年程前からフィルター付きが主流になり、肺がんのタイプがかなり変化してきました。両切りタバコの時代には、肺の入り口近くにできやすい扁平上皮がんや小細胞肺がんが多かったのですが、フィルター付きのタバコの煙は粒子が細かく肺の奥まで届くため、肺の奥にできやすい腺がんが増えてきたと考えられます。

喫煙者でもこのような変化があるのですが、煙の粒子が細かいと周囲への影響も強くなると考えられ、周囲の非喫煙者もより注意が必要です。タバコ以外の肺がんの原因物質として、アスベストやヒ素なども知られていますが、職業としてこれらの物質を扱っていた人でなければ、喫煙者にとっても非喫煙者にとっても、やはりタバコが一番の原因です。

最近は喫煙率が低下してきていますが、この傾向が続くと20-30年後には肺がんが減少してきます。
Q7血液から遺伝子を調べる方法があると聞きました。血液検査では調べられないのでしょうか?

A

遺伝子を調べるといっても、DNA鑑定のように個人の遺伝情報を調べるわけではありません。非小細胞肺がんの遺伝子検査の対象はあくまでも“がん細胞”の 遺伝子であり、がんになっている細胞の遺伝子にどのような異常(変異)がおきているのかを調べます。そのため、検査にはがん細胞が必要です。
Q8以前、遺伝子検査を受けました。再度調べる必要はありますか?

A

一般的に行われているがんの遺伝子検査では、がん細胞の全ての遺伝子を調べているわけではないため、別の遺伝子異常について調べたいときには別の試薬を使って検査を行う必要があります。

たとえば、ROS1 融合遺伝子があるかどうかを調べたい場合には、ROS1 融合遺伝子があるときにだけ反応する特別な試薬を使って検査を行います。 ですから、以前にEGFR 遺伝子変異やALK 融合遺伝子について検査を行った場合でも、ROS1 融合遺伝子があるかどうかを調べたい場合には、あらためて検査を行う必要があります。

なお、ROS1 融合遺伝子ALK 融合遺伝子は最近みつかった遺伝子であるため、以前に遺伝子検査を受けたことがある方でも、まだ受けていない可能性がありますので、担当の医師に相談されるとよいでしょう。

近年、がんの遺伝子についての研究が活発に行われており、遺伝子の異常に効果のある新しい薬が今後も増えることが期待されています。その場合にも、治療を行うためには遺伝子検査が必要になります。何度も検査を行うのは大変かもしれませんが、検査の結果によっては、選べる薬の種類が増えて、患者さんにとってよりよい治療を行うことができるようになる可能性があります。

遺伝子反応

【監修】日本医科大学付属病院 がん診療センター長 教授 久保田 馨先生

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