慢性骨髄性白血病(CML)を学ぶCMLとは?はじめに慢性骨髄性白血病(CML)は、血液細胞のもととなる造血幹細胞ががん化する病気です1)。2019年に日本で新たに白血病と診断された患者さんの数は約14,000人で2)、このうちCMLの患者さんは1~2割程度3)と考えられています。症状があらわれにくいため、健康診断や他の病気の検査で偶然発見されることも少なくありません4)。CMLは、急性骨髄性白血病(AML)と名前がよく似ていますが、AMLが慢性化したという意味ではありません。CMLにおける「慢性」とは、病気の発生から実際に症状があらわれるまでに長い期間を要するため、病状に急激な変化がない期間が慢性的に続くという意味です。とはいえ、放置していると診断から3~5年でAMLに似た症状を引き起こすため、早期から治療を始めることが重要です5)。最近では、適切な治療を続けることで、一般成人と同じぐらいの平均寿命が期待できるという研究結果も報告されています6)。慢性骨髄性白血病(CML)の原因慢性骨髄性白血病(CML)は、血液細胞をつくる造血幹細胞の遺伝子に異常が生じることで起こる病気ですが、なぜ造血幹細胞の遺伝子に異常が起きるかはよくわかっていません5)。CML患者さんに起きている造血幹細胞の遺伝子の異常については、研究が進んでいます。患者さんの95%以上で「フィラデルフィア(Ph)染色体」と呼ばれる異常な染色体が見つかっています。このPh染色体上にあるBcr-Abl(ビーシーアールエイブル)遺伝子が発症の原因です。ヒトの染色体は23対46本ありますが、フィラデルフィア(Ph)染色体は、9番目と22番目の染色体が途中から切れて入れ替わって融合したものです(相互転座)。それぞれの染色体の切り口にあるBCR遺伝子とABL遺伝子が融合し、Bcr-Abl遺伝子が新しく形成されます。このBcr-Abl遺伝子によってつくられるBcr-Abl蛋白(チロシンキナーゼ)が、白血病細胞を増やす指令を出すように促すため、体内で白血病細胞が増え続けます4)。染色体とは染色体は、細胞の中にあるDNA(デオキシリボ核酸)とそれに結合した蛋白質が折りたたまれてできた長い糸状の構造体で、遺伝情報を運んでいます7)。ヒトの染色体は1番から22番までそれぞれ2本ずつある常染色体と、2本の性染色体の計46本で構成されています8)。図. ヒトの染色体と遺伝子9)※ゲノム:遺伝子をはじめとした遺伝情報全体を指す【出典】1) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版.金原出版:97, 20232) 公益財団法人がん研究振興財団:がんの統計2024:84-87, 2024https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2024_data_J.pdf (2024/7/26参照)3) 木崎昌弘監修:よくわかるがん治療 血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫 主婦の友社:66-67, 20204) 医療情報科学研究所編:病気がみえるvol.5 血液 第3版 メディックメディア:172, 176, 20235) 宮崎仁:もっと知りたい 白血病治療 患者・家族・ケアにかかわる人のために 第2版 医学書院:62, 65, 69, 20196) Bower H, et al.: J Clin Oncol. 2016; 34: 2851-57.7) Alberts B, et al. 著 中村桂子, 松原謙一 監訳:Essential 細胞生物学 原書第5版 南江堂:179, 806, 20218) 永井正:図解でわかる 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫 法研:111, 20169) 国立がん研究センター:がん情報サービス がんゲノム医療 もっと詳しく 5. もっと詳しく:ゲノムとは、遺伝子とは[更新・確認日:2022年11月24日] https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/genmed02.html#anchor5 (2024/7/26参照)【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生更新年月:2024年9月ONC46N018B