「坂本はと恵氏コラム」治療も仕事もあきらめないために ~社会保障制度の活用術~がん患者さんにぜひ利用して欲しい
「障害年金」

「障害年金」とは

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター 坂本はと恵氏
国立研究開発法人
国立がん研究センター東病院
サポーティブケアセンター/
がん相談支援センター
坂本はと恵氏

障害年金とは、病気やけがによる障害のため、日常生活や働くことに支障が出た場合に支給される公的年金制度のひとつです。一定の障害の状態にあること、公的年金制度に加入していること、さらには保険料の納付要件を満たしていることなどが申請の条件です。

障害年金でいう一定の障害とは、初診日が国民年金あるいは厚生年金の被保険者期間中であり、原則として初診日から1年6ヵ月経過した時点の身体の状態のことです。その状態とは、身体の機能が働くことに制限を受けたり、日常生活に著しい制限を受けるような状態となっている場合、あるいは、働くこと自体が日常生活に著しい制限を加えるような状態を示します。ただし、障害の状況によっては、1年6ヵ月以内であっても申請することができます。(表1)

また、がんの場合に理解しておきたいのは、人工肛門や新膀胱の造設、あるいは尿路変更術など、目に見えて身体の機能が変わった場合だけが障害年金の申請対象となるわけではないということです。抗がん剤などの薬物治療の副作用による倦怠感(だるさ)や末梢神経障害(しびれ、痛み)、貧血、下痢、嘔吐、体重減少など、客観的にわかりにくい内部障害の場合でも、その原因ががんの治療によるものであり、現在の仕事に支障をきたすことが認められれば支給される可能性があります。

■表1 ※がんの場合

身体状況 障害認定日
人工肛門造設、尿路変更術 造設日から6ヵ月を経過した日
新膀胱 造設日
喉頭全摘出 全摘出した日
在宅酸素療法 療法開始日
治療の副作用による倦怠感・悪心・嘔吐・下痢貧血・体重減少
などの全身衰弱
初診日から1年6ヵ月

「障害年金」に関するよくある誤解

障害年金申請の際に、「仕事をすべてやめてしまわないと受給できないのではないか?」「会社や主治医から勧められていないのに申請できないのではないか?」と疑問を持たれる方がいらっしゃるのではないでしょうか?
障害年金は、患者さんご自身が支払った年金をもとに支給されるものです。ご自身が申請をすることで、初めて受け取れる制度ですので、申請対象となる場合には、ご自身が積極的に動いてみましょう。
尚、障害年金を理解するときの留意点をいくつかご紹介しておきたいと思います。

①働きながら受給できる場合があります。
②障害年金をさかのぼって申請できるのは5年間です。
③傷病手当金と障害年金と両方がもらえるときは、傷病手当金の金額が調整されます。
④身体障害者手帳の等級が障害年金の等級にそのまま当てはまるわけではありません。
⑤申請の際には、主治医との連携が重要です。

がん患者さんでも受け取れる「障害年金」

障害年金は、ケガによる障害だけでなく、あらゆる病気が対象となることを忘れないでください。もちろん、がんも障害年金受給の対象になるということです。
また、障害年金は、年金を収める方の当然の権利として受け取れるもので、恩恵的なものではなく、障害年金を受け取ることで将来受け取る老後の年金がカットされるものでもありません。

皆さんには、是非このことを覚えておいていただき、経済的支援を必要としていたにもかかわらず、年金を受け取れない、あるいは受け取らないまま過ごしてしまった、ということがないことを願います。

※個々のケースにより異なります。

【監修】国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター 坂本はと恵氏

更新年月:2022年11月

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