がん患者さんのお悩み相談室 ~がんとお金~がんの治療費は高額なのでは?

Q.がんと診断されました。どのくらいお金がかかるのか不安です

さまざまな支援制度を活用することで、自己負担額を抑えることができます

高額療養費制度と限度額適用認定証

がんの治療には、直接治療にかかるお金とその他にかかるお金がありますが、治療についてはその多くが保険診療です。70歳未満であれば、自己負担額は3割で済みます。それでも、がんの治療は高額でたくさんのお金がかかるという印象をお持ちの方は、少なくありません。がん患者さんみなさんに利用していただきたいのが、医療費支払いの自己負担を軽くする、高額療養費制度です。病院や薬局で1カ月間に支払う金額が、あらかじめ定められている自己負担限度額を超えた場合、超えた金額が後で払い戻されます。自己負担限度額は、年齢や所得区分に応じて決定します。

高額療養費制度は、限度額を超えて支払った医療費が、後になって払い戻されるものですが、事前に加入している協会けんぽまたは健康保険組合に「限度額適用認定証」を申請し、窓口に提示すると、1ヶ月の支払いを自己負担限度額までにとどめることができ、高額な医療費を一時的に立て替える必要がなくなります。医療費が高額になっても自己負担額が一定の金額に収まるよう、手続きをしておくことをお勧めします。ご自身が加入する保険者(健康保険組合、協会けんぽ≪全国健康保険協会≫、共済組合、国民健康保険など)に申請すると認定証が交付されますので、受診時に医療機関等の窓口に提示します。治療費が自己負担限度額を超えるかどうか分からなくても、治療期間がはっきり分かっていなくても申請は可能です。早めに手続きを済ませて、会計窓口に提示しておくと安心です。

「限度額適用認定証」を医療機関に提示していない月の支払いは、3割負担の金額をいったん支払い、その後、高額療養費制度の還付金受け取り手続きを行う必要があります。なお、70歳以上の方は限度額が決まっていますので、申請の必要はありません。

※先進医療は、健康保険等が適用されないため高額療養費制度の対象にはなりません。

経済的負担を軽減する公的制度

他にも、患者さんやご家族の状況に応じて、経済的な負担を軽減する制度があります。ご自身が該当される制度かどうか、内容を確認してみるとよいでしょう。

高額医療・高額介護合算制度

毎年8月から1年間の、同一世帯における医療保険と介護保険の自己負担額の合計が、基準額を超えた場合に、超えた金額が還付されます。

石綿(アスベスト)健康被害給付

石綿(アスベスト)を吸入することにより、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚を発症した患者さんに対して、給付金が支給されます。

傷病手当金

会社にお勤めの方が、会社を休んだ日が連続して3日間あり、4日目以降も休んだ場合を対象に、会社を休んでいる間に給与の支払いがない、あるいは支払額が傷病手当金よりも少ない場合は、その差額受け取ることができる制度です。通算1年6カ月という期間が決められています。

※退職後も引き続き受給できる場合があります。

障害年金

永久人工肛門、尿路変更術、新膀胱造設、咽頭全摘出、在宅酸素療法、治療の副作用による倦怠感、体重減少などの全身衰弱など、病気により身体の状況が変化した場合に支給される年金です。治療内容や身体状況により、ご自身が該当しないかどうか確認してみましょう。

ひとり親家庭医療費助成制度

ひとり親家庭の医療費を助成する制度です。

医療費控除

1年間に多額な医療費を支払った場合、確定申告を行うことにより、支払った所得税が還付される制度です。

加入している健康保険や生命保険の条件を確認する

上記の制度以外にも、会社で加入している健康保険組合や、ご自身の生命保険などに、がん治療に関する制度や特約がないか、確認してみましょう。

まとめ:公的制度や健康保険、生命保険を積極的に活用する

新しい薬による治療が登場し、入院せずに外来で治療が受けられるなど、がん医療の進歩は目覚ましいものがありますが、経済的な負担はいつの時代も大きな課題であることに変わりはありません。ご自身の経済的負担をできるだけ軽減するためにも、公的な制度や健康保険、ご自身が加入されている生命保険の制度を積極的に活用しましょう。お金に関わる疑問を解消して、安心して治療を受けていただきたいと思います。

【監修】国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター 坂本はと恵氏

更新年月:2022年11月

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