がん関連血栓症を学ぼうがん関連血栓症の診断と治療

がん関連血栓症の疑いがあり医師が診察をして、検査が必要であると判断した場合には、血液検査や画像検査を行います。検査によりがん関連血栓症と診断された場合は、患者さんの状態に合わせて、お薬を中心とした治療を行っていきます。

ここでは、がん関連血栓症の診断と治療の方法についてご紹介します。

どんな検査をするの?

下肢の浮腫や胸部圧迫感などの症状がありがん関連血栓症が疑われる時には、まず医師が診察を行います。スクリーニング検査や血液検査を行い、血栓がある可能性が高い場合は画像検査を行います※1,2

各検査では、次のことを調べていきます。

スクリーニング検査

スクリーニング検査では、血圧・心拍数測定、酸素分圧測定、胸部レントゲン検査、心電図検査、動脈血ガス分析(動脈に針を刺し血液中の酸素や二酸化炭素の量を測定する検査)、血液生化学検査を行います。

スクリーニング検査の結果、血栓塞栓症が疑われる場合には、以下の精密検査を行います※1,2

止血検査(Dダイマー測定)

血液中の「Dダイマー」の値を測定する検査です。Dダイマー値が異常値を示す場合には、血栓症を合併していることが疑われるため画像検査などで診断を行います。しかしながら、Dダイマー値は、がん関連血栓症のほか、がん自体や手術、妊娠、炎症などによっても上昇します。Dダイマー値に問題がなければ(各施設の基準値未満であれば)血栓症である可能性は低いと判断され、画像検査は実施せず経過観察することになります※1,2

画像検査(下肢静脈超音波検査)

深部静脈血栓症の疑いのある患者さんの中で、問診・診察において、その可能性が高い場合や、Dダイマー値が基準値よりも高い場合は、超音波を用いた下肢静脈超音波検査を行います。

下肢静脈超音波検査では、下肢の血管内に血栓があるかどうか、血栓の大きさ、血管の状態や血液の流れなどを調べます。

下肢静脈超音波検査は、下肢に直接ゼリーを塗り、プローブ(エコー機器の患者さんに当てる部分)で皮膚を圧迫しながら大腿部の付け根から膝の裏側、膝下の静脈を確認していきます※1,2

画像検査(造影CT検査)

深部静脈血栓症の疑いが強いにもかかわらず静脈超音波検査で血栓が確認できない場合や、スクリーニング検査あるいは血液検査の結果、肺血栓塞栓症である可能性が高い場合には、造影CT検査を行います。造影剤を静脈に注入し、血管内に循環させた状態でCTを撮影して、血栓の有無や場所、大きさなどを確認します※1,2

どんな治療法があるの?

がん関連血栓症では、抗凝固薬というお薬での治療が中心となります。抗凝固薬は、急性期には点滴や内服薬で投与されます。

手術前や出血のリスクが高いなどの理由で抗凝固薬での治療ができない患者さんに対する治療として肺血栓塞栓症の予防の観点から、下大静脈の中にフィルターを一時的に留置することもあります※1,2

抗凝固療法

抗凝固療法とは抗凝固薬により血栓症を改善する治療法です。がん関連血栓症では、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症のいずれも抗凝固療法での治療が中心となります。

抗凝固薬は、血が固まりやすくなるのを防いで血液をさらさらにして血栓を小さくする作用を有しています。注射薬と内服薬があり、医師が最初の1週間(初期治療)、その後の3ヵ月間(維持治療)、そして3ヵ月から無期限(延長治療)においてそれぞれの治療の時期で患者さんの状態などを考慮して選択します※1,2,3

血栓溶解療法

血栓溶解療法は、体内にカテーテルを留置し、血栓溶解薬を用いて血管内で閉塞した血栓を溶かす治療法です。重症肺血栓塞栓症の治療として用いられることがあります。血栓量が多い時にはカテーテルを用いた血栓吸引術や血栓破砕術を併用することもあります。出血などの合併症が生じる場合があり熟練した専門施設で施行することが推奨されています。

がん関連血栓症では、できるだけ長い期間にわたって抗凝固療法による治療を行うことが必要であり、その期間は最低6ヵ月以上とも言われています※2,3

一方、がん患者さんでは、がんでない方に比べて出血のリスクが高く、また、がん治療の副作用による血液毒性や消化器症状などさまざまな合併症にも注意が必要です。そうしたことから、がん関連血栓症に対する抗凝固療法では、患者さんひとりひとりに対する出血リスクやがん治療の副作用、あるいはがん関連血栓症の再発のことも考え医師が調整して行っていきます。

※1 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断, 治療, 予防に関するガイドライン(2017年改訂版)
https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2020/08/JCS2017.pdf

※2 腫瘍循環器診療ハンドブック. 監修; 小室一成, 編集; 日本腫瘍循環器学会編集委員会, メジカルビュー社, 2020年12月, 東京.

※3 向井幹夫. オンコロジックエマージェンシー 9静脈血栓塞栓症(VTE). 新臨床腫瘍学(改訂第5版)‐がん薬物療法専門医のために‐.日本臨床腫瘍学会編集, 南江堂, 711-713,2018年7月, 東京.

リンク先のサイトはファイザーが所有・管理するものではなく、ファイザーはこれらのサイトの内容やサービスについて一切責任を負いません。

【監修】地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 成人病ドック科 主任部長 向井幹夫 先生

更新年月:2021年11月