がんとつきあう(がん治療の副作用)がん治療に伴う吐き気(はきけ)・嘔吐(おうと) 吐き気・嘔吐とは 吐き気とは吐きそうになる感覚のことで、嘔吐とは胃のなかにあるものが逆流して吐き出されることをいいます※1。 がん治療に伴う副作用としての代表的な症状が、この吐き気・嘔吐です※2。患者さんにとって、身近でつらい症状のひとつとして知られています※2。 がん治療中に患者さんが経験する吐き気・嘔吐 がん患者さんが経験する吐き気・嘔吐の原因は多岐にわたり、また、原因は必ずしもひとつではなく、複数の原因によって起こることがあります※3。 治療による影響 抗がん剤や分子標的薬のほか、医療用麻薬などによる薬物治療、手術や放射線療法によって、ムカつきや吐き気・嘔吐を催すことがあります※3。 がんそのものの影響 がんそのものが消化器や脳に影響して、食事の流れが滞ったり、胃や腸などの消化管の動きが弱くなるなどによって、吐き気や嘔吐が生じることがあります※3。 精神的な影響 「ムカムカする」「吐きそう」「吐く」といった症状を経験すると、治療に伴う不快な体験として記憶され、治療を受ける日の朝は治療の前から吐き気がすることがあります※4。そのほか不安や緊張※3が影響することで、吐き気・嘔吐の症状が生じる場合があります。 吐き気・嘔吐の症状がある時には 吐き気や嘔吐の症状がある時には、無理して食事をとる必要はありません※2。炭水化物を多く含む食べもの(ご飯、麺など)※3や豆腐※5のような消化の良いもの、ゼリーやアイスクリームなど食べやすいもの、食べられるものを可能な範囲でとるようにしましょう※6。一度にたくさん食べられない時は、少量ずつ、数回に分けて食べても良いでしょう※3。また、脱水を防ぐために水分補給をこまめに行います※2。水やお茶、電解質を含むミネラル飲料のほかにも、水分の多い果物、スープ、みそ汁などを摂取するとよいでしょう※1。 吐き気や嘔吐は身体的にも精神的にもつらい症状ですが、最近は治療の内容に応じて、吐き気や嘔吐の起こりやすさを予測することで、吐き気や嘔吐による症状が起こる前にお薬などを使って予防することが可能になってきました。また、症状が起きた場合でも、軽くしたり和らげたりすることも可能になっています※3。吐き気や治療を始める前の不安といった症状は、ご本人が話すことで初めて医療者に伝わります。「がん治療を受ける上では仕方がないこと」と我慢せずに、医療スタッフに伝えることも大切です。そのためには、がん治療が始まる前から、吐き気や不安、不快感について、症状がないときも含めて、話し合っておくようにすると、ちょっとした変化があった場合にも話しやすくなります。医療スタッフと相談しながら、症状や治療の状況に応じて、対策をしていくとよいでしょう。 ※1 ≪がん看護実践ガイド≫がん治療と食事 治療中の食べるよろこびを支える援助. 監修; 日本がん看護学会, 医学書院, 2016年6月, 東京. ※2 小林由佳, 中西弘和. がん化学療法に伴う摂食障害(悪心嘔吐、味覚異常など)の対策. 静脈経腸栄養 2013; 28: 627-634. ※3 国立がん研究センター がん情報サービス 吐き気・嘔吐 もっと詳しく https://ganjoho.jp/public/support/condition/nausea/ld01.html 2023/2/22参照 ※4 「制吐薬適正使用ガイドライン」2015年10月【第2版】一部改訂版 ver.2.2(2018年10月)(編集:日本癌治療学会) http://www.jsco-cpg.jp/guideline/29.html 2023/2/22参照 ※5 一生役立つ きちんとわかる栄養学. 監修; 飯田薫子, 寺本あい, 西東社, 2019年7月, 東京. ※6 がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2017年版(編集:日本緩和医療学会 ガイドライン統括委員会) https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/gastro2017.pdf 2023/2/22参照 【監修】帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科 渡邊清高 先生 更新年月:2023年10月 ONC46N006C