がんとつきあう(がん治療の副作用)がん治療に伴う高血圧 がん治療に用いるお薬の副作用として、高血圧になることがあります※1。高血圧は身近な症状ですが、重大な病気につながる可能性もあります。そのため、主治医から高血圧になる可能性を説明されたら、定期的に血圧を測定・記録しておき、血圧が高くなったと感じたらすぐに対応することが大切です。 高血圧とは 血圧は、血液が血管の壁を押すときの圧力のことで、心臓が収縮したり広がったりすることでうまれます。血圧の値は、心臓から押し出される血液量(心拍出量)と、血液の流れにくさ(血管抵抗)によって決まります※2。くり返し測っても血圧が正常より高い場合を高血圧といいます。 心臓の働きと血圧の関係 血圧には収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)があります。 収縮期血圧は心臓が縮んで血管に最大の圧力がかかっているときの血圧で、拡張期血圧は心臓が広がっているときに血管にかかっているときの血圧のことをいいます※2(図)。 図 血圧の仕組み がん治療と高血圧 がんの治療に用いるお薬はいろいろありますが、分子標的薬という種類のお薬、その中でも血管新生阻害薬と呼ばれる、血管を作る働きを抑えるお薬によって高血圧になる場合があります※1、3。また、白血病や悪性リンパ腫といった血液がんの患者さんが、骨髄移植の際の拒絶反応を抑えるためのお薬を服用している場合も、お薬の種類によっては高血圧になる可能性があります※1。 高血圧が起こるメカニズム なぜこれらのお薬を服用することで高血圧になるのか、そのメカニズムは、十分には解明されていません。お薬を服用することで体内の一酸化窒素が減少したり腎機能が悪くなったりすることが高血圧の原因ではないかと考えられています※1。 高血圧の起こり方 高血圧の起こり方は同じ種類のお薬であっても異なります※3。急激に血圧が高くなるお薬と、徐々に血圧が高くなるお薬があるので※3、ご自身が使っているお薬の特徴を知っておくことが大切です。 高血圧になると、脳卒中や心筋梗塞などの発症につながる可能性もあります※1。いつもよりも高い血圧や脈拍の数値をきっかけに、これらの重大な病気を早い段階で発見できることもあるため、普段から血圧を測定しておくことが大切です※3。 主治医の先生から「このお薬を服用することで血圧が高くなることがあります」と言われたら、ご自身で血圧を測定して記録しておきましょう。血圧の測定については、「正しい血圧の測り方」で紹介していますので、参考にしてみてください。気になる点がある場合には積極的に医療スタッフに相談しましょう。 ※1 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編 高血圧治療ガイドライン2019, ライフサイエンス出版. ※2 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話, 編集 特定非営利活動法人日本高血圧学会, 特定非営利活動法人日本高血圧協会, 認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML, 2019年10月25日 発行, ライフサイエンス出版. ※3 国立がん研究センター がん情報サービス 薬物療法 もっと詳しく https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html#molecular_target_drug 2023/4/8参照. 【監修】帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科 渡邊清高 先生 更新年月:2023年8月 ONC46N009B