がん関連血栓症を学ぼうがん関連血栓症の予防

がん患者さんは、がん関連血栓症の合併症が起こりやすい状態にあり、注意が必要です。特に、がん治療を受けている最中やがん関連血栓症を発症した経験がある患者さんの場合には、血栓症を再度発症する可能性が高いことから医療スタッフと相談しながら血栓症の発症を予防することが大事です。

ここでは、その予防のためにできることについてご紹介します。

どんな予防法があるの?

理学療法を中心とした予防のほか、患者さんご自身で行える予防法があります。

理学療法による予防

長期間安静にしていると静脈血栓塞栓症を発症する可能性が高くなります。したがって、手術後は、できるだけ早い時期にベッドから離れて立ち上がったり歩行したりすることが勧められています。手術後、すぐに立ち上がったり歩行したりすることが難しい場合は、ベッド上での脚の上げ下げやマッサージ、足関節の運動を行うと良いでしょう。どなたかの力を借りて行うのでも構いません。看護師や理学療法士に相談することも良いでしょう。また、手術をしていない、または手術後しばらく経過している患者さんも、積極的に運動をするように心がけましょう。

さらに「弾性ストッキング」という、弾力性をもった特殊なストッキングの着用により下肢の静脈の血流を改善させる方法や、「間欠的空気圧迫法」という、脚に巻いた器具に空気を送って脚を圧迫する医療機器を用いて静脈の血流を良くする方法があります。

いずれの方法も、医師の判断と指導のもとで行います※1

  • 弾性ストッキング①

    図:弾性ストッキング(靴下タイプ)2種(膝下のもの、太ももまでのもの)

  • 弾性ストッキング②

    図:弾性ストッキング(タイツタイプ)2種(両足用、片足用)

お薬による予防

非常に血栓が作られやすいがん種である多発性骨髄腫などの患者さんや、外科的手術を受ける患者さん、そして一度がん関連血栓症を発症した患者さんでは、お薬による予防を行うこともあります。

しかし、がん患者さんでは、血栓が作られやすい一方で、がん自体やがんの治療によって出血が起こりやすかったり、血が止まりにくかったりすることがあります※2

そうしたことから医師は、予防的治療を行うことについて患者さんの出血のリスクと血栓症のリスクを考慮して、治療方針を決定します。

自分でできる予防法

体が脱水状態になると、血がドロドロになり血栓ができやすくなってしまいます。がんの治療薬の副作用による吐き気や食欲不振で水分がうまく取れない方は、医療スタッフに相談すると良いでしょう。

こまめに水分補給をし、脱水にならないよう注意することが大切です。ただし、医師から水分制限を指示されている患者さんについては、水分摂取量に関して医師へ確認の上で行うようにしましょう。

がん治療を受けている患者さんやがんを経験した方は、日常生活において、常に血栓症への注意が必要です。ご自身でできる水分補給や運動を、意識して行うと良いでしょう。

特に高齢の方や、肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を持つ方、喫煙の習慣がある方は血栓症の発症リスクが高まることが分かっています。肥満や喫煙に該当する方は、生活習慣の改善を心がけるようにしましょう。

がん関連血栓症は、がん患者さんであれば誰にでも起こりうる合併症であり、患者さん自身が十分に気を付けていたとしても血栓を完全に防ぐことは難しいものです。さらに、今回説明した静脈血栓塞栓症の他に心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な動脈血栓症を発症することもあり、がん診療においては、血栓塞栓症の発症にいつも警戒しておくことが必要です※3

しかし、血栓症は早めに気付いて治療を開始することで悪化を防ぐことができます。普段と異なる変化や、気付いたことがあればすぐに担当されている医師、外来での看護師、薬剤師、リハビリテーションでの理学療法士など医療スタッフに相談することがとても大切です。

※1 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断, 治療, 予防に関するガイドライン(2017年改訂版)
https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2020/08/JCS2017.pdf

※2 国立がん研究センターがん情報サービス 1.血小板減少について(2021年8月2日時点)
https://ganjoho.jp/public/support/condition/thrombocytopenia/ld01.html

※3 向井幹夫. がん関連血栓症とOnco-Cardiology.日本内科学会雑誌2020; 109: 1960-1967.

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【監修】地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 成人病ドック科 主任部長 向井幹夫 先生

更新年月:2021年11月