家族は「第二の患者」看病の過程で起こる、家族の心の問題がんの診断を受けたとき、治療中、治療効果が得られたとき、再発転移がわかったとき、病状が進行して根治の見込みがないと告げられたとき、残されている時間が限られていると知ったときーーーその時々で、患者さんと同様に家族の心は揺れ動きます。時に不安・抑うつなどとの精神的ストレスや肉体的変化が認められる場合があることが、研究により明らかになっています。これらのことから、家族は「第二の患者」と言われています。家族は「患者さんのサポーター」としての役割を期待されると同時に、「第二の患者」としての葛藤にも向き合うことを余儀なくされるといっても過言ではないかもしれません。ここでは、多くのご家族が直面する心理的ストレスの3例をご紹介します。「がん」と告げられたときの衝撃家族の誰かが「がん」と告げられたとき、あなたはどう思うでしょうか。「そんなはずはない!」、「なぜ今まで誰も教えてくれなかったんだ!」、「なぜ私の家族がつらい目に遭わないといけないんだ!」──おそらく、そのどれもが当てはまるのではないでしょうか。自分の大切な家族が「がん」だと知ったとき、心には強い葛藤があらわれます。そして時間が経過し、最初のショックがおさまると、次にやってくるのは現実的な問題です。勤め先にはどのように伝えるか、治療費はどこから捻出すれば良いのか、どうやってサポート体制を作っていくのか……それらに対処しているうちに、自分の内に起こっている精神的負担は後回しとなり、気付けば大きなストレスとなって家族の心を苦しめることになるのです。生活スタイルの変化によるストレスがんの治療が進んでいくと、家族の生活スタイルは多少なりとも変化します。たとえば、これまで家事を一手に引き受けていたお母さんが、治療のために家を空けることが多くなると、家族が代わって家事をこなさなければなりません。このように、これまで患者さんが担ってきた役割を、家族で手分けして引き受けなければならないという負担は、じつは家族にとって大きな問題となることが多いのです。この役割分担がうまくいかないと、家庭内に不満や怒りがたまり、常に緊張状態が続くことになってしまいます。不確定な将来に対する不安や恐怖、無力感患者さんはもちろんのこと、家族を苦しめる大きな要因となるのが、「がんが再発・転移しないか」、「本当にこのまま治療を続けて治るのか」などの、不確定な将来への不安や恐怖です。検査の結果が良かったり、治療の効果を得られたときは、これらの感情から解放されて、一時的に幸せな気持ちで満たされますが、またしばらくすると再燃する感情であるため、慢性的なストレスとなって家族の心に影響を及ぼします。また、家族であるからこそ、「自分は何もしてあげられない」と強い無力感を抱くものです。治療については医師にゆだねるしか方法がなく、患者さんに替わって痛みを引き受けることもできない家族は、ことあるごとに無力感と自責の念にさいなまれます。結果が悪いと、誰かのせいにして当たったりしてしまいます。自分の生活も大事にし、リラックスする患者さんをサポートするため、家族が寝る間も惜しんで看病に専念していると、やがて必ず限界がくるでしょう。また、「家族ががんになって苦しんでいるのに、私だけ楽しむことなんてできない」と、これまで楽しんでいた趣味や娯楽をいっさい断つ人も少なくありません。しかし、ときには患者さんから離れて、リラックスする時間を作ることも大切です。ずっと気を張り詰めて、ストレスが溜まっている状態で患者さんと接するのは、双方にとって良くないこと。「少し気持ちが窮屈になってきているな……」と感じたら、思いきって「やりたいことをやる時間」を作るようにしましょう。ひとりで抱え込まず、患者さんが行なっていた家庭での役割についても、家事ならヘルパーさんなど周りの誰かに助けを求めたり、同じ思いの患者家族の方々と話すのもいいでしょう。ご家族もサポーターを増やしてくださいここまでご紹介してきたような状況が生じたときは、家族で無理に抱え込まず、医師・看護師や薬剤師・医療ソーシャルワーカーなど、病院で話しやすい相手に相談してみて下さい。医療従事者は、患者さん・ご家族からお話を伺いながら、より適した情報や専門職に橋渡しするお手伝いをしています。関連リンク介護休業・介護休暇とは【参考文献】「家族がガンになったときすぐに知りたいQ&A」 矢沢サイエンスオフィス編 2006年学習研究社 季羽倭文子著 2010年 池田書店【監修】国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター副センター長 坂本はと恵氏更新年月:2024年10月ONC46O006A