大腸がんの主な治療法と副作用薬物治療と副作用

大腸がんの薬物療法は、手術後のがん再発の予防のための補助治療として、あるいは根治目的の手術が困難な進行がんや再発がんにおいて延命と生活の質(QOL)の向上を目的に行われます。

手術ができない場合や再発した場合の抗がん剤治療

手術でがんをすべて切除できない場合、少なくとも自分の身の回りのことを行える、肝臓や腎臓の機能が一定の基準を満たしている、転移・再発がX線検査やCT・MRI検査などで確認できる、といった条件を満たす人には、腫瘍の増大を遅らせて延命と症状のコントロールを目的に、薬物療法を行うことがあります。

薬物療法によって、がんが切除可能となることもあります。再発した場合も、手術で切除できないことが多く、同じように薬物療法が行われます。最初の治療(一次治療)の効果が不十分な場合、薬剤を変更して薬物療法を継続していきます。大腸がんの治療に用いられる薬は、殺細胞性抗癌薬、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬の3種類です※1。副作用は使用する薬剤によって異なり、出現する副作用やその程度には個人差もあります。

今後の医療の進歩で、治療方法がさらに増えることも考えられます。また、国からまだ認められていない新しい薬剤に挑戦する臨床試験(治験)を行っている病院もあるので、医師からよく説明をしてもらい治療を受けるとよいでしょう。

殺細胞性抗癌薬

殺細胞性抗癌薬は細胞分裂を邪魔して、がん細胞が増えないようにする薬で、がん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を及ぼす可能性があります。特に、髪の毛、口や消化管などの粘膜、赤血球や白血球などの血球を作る骨髄など細胞分裂が盛んな細胞ほど影響を受けます。そのため、脱毛や口内炎、腹痛、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が減少したりすることがあります※2

そのほか、全身の倦怠感や食欲不振、吐き気、味覚障害が生じたり、肝臓や腎臓の障害や神経症状(めまい、手足のしびれなど)が出ることもあります※2

殺細胞性抗癌薬の副作用による苦痛を軽くする方法や予防する薬の開発も進んでおり、特に吐き気や嘔吐は原因や症状の強さに応じた対策をすることで、症状を予防したり、和らげたりすることができます※3。副作用が著しい場合には治療薬を変更したり、治療の休止や中断を検討することもありますので、治療中でも医師、薬剤師とよく相談しましょう。

分子標的治療薬

殺細胞性抗癌薬はがんの増殖に直接作用するのに対して、分子標的治療薬はがんの増殖などにかかわる特定の分子だけを狙い撃ちにして、その働きを抑えるのが特徴で、分子標的治療薬は単独、もしくは殺細胞性抗癌薬と組み合わせて使われます※4。副作用は、皮膚症状、薬剤性の肺炎、下痢、肝臓の障害、高血圧や、インフュージョンリアクション(治療初期の高熱、関節痛、息苦しさなどの症状)などがあらわれることがあります。どのような副作用がいつ頃でやすいかは、分子標的治療薬の種類によって特徴が異なります※4

免疫チェックポイント阻害薬

免疫細胞であるT細胞を活性化させることで、がん細胞が増えないようにする薬です。ただし、この薬が効く可能性のあるタイプのがんだと診断された人に用いられることがあります。

※1【出典】大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2022年版, 金原出版, p21-42, 2022

※2【出典】大腸癌研究会. 患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版, 金原出版, p35-36, 2022

※3【出典】国立がん研究センターがん情報サービス 症状を知る/生活の工夫 さまざまな症状への対応 吐き気・嘔吐 
https://ganjoho.jp/public/support/condition/nausea/index.html)2024/1/25 参照

※4【出典】国立がん研究センターがん情報サービス 薬物療法 もっと詳しく
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html)2024/1/25 参照

【監修】国立がん研究センター東病院 消化管内科 吉野孝之 先生
小谷大輔 先生

更新年月:2024年3月

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