がん患者さんのお悩み相談室 ~がんと家族~がんと向き合う家族の心得Q.家族ががんになりました。家族としてできることは何ですか?がんの正しい情報を得て、患者さんに寄り添い、家族だけで抱え込まないがんの診断直後は・・・がんの診断を受けた直後は、患者さんご自身はもちろん、ご家族全体にさまざまな影響が出てきます。例えば、漠然とした不安やいらいら感、強い落ち込みが続くなど、気持ちの変化に直面する方は少なくありません。またこうした気持ちの変化は、「第二の患者」といわれるご家族にも起こりうることです。ご家族も不安な思いの中、患者さんをどのように支えていけばよいのか悩まれるケースも少なくないということです。ここでは、ご家族の立場でできることをご紹介していきます。もし、ご自身に当てはまることがあれば参考にしてみてください。1)病気に対する正しい情報を集めましょうまずは、根拠ある正しい情報を得ることが大切です。主治医からの情報以外にも、科学的な根拠に基づいて、臓器別や症状別に推奨される治療方法について掲載された、患者さん向けのガイドライン(書籍)や、インターネットなどから情報を得ることができます。その際に、診断を受けている病気はどのようなもので、どのような治療法があるのか、見込まれる治療や、治療によって生活にどのような影響が出やすいのかを中心に確認するとよいでしょう。これらの内容は、主治医から説明を受ける事柄ですが、事前に用語の知識を持っていれば、診察室で落ち着いて主治医とのコミュニケーションを図る手助けになるはずです。またご家族は、診察時に主治医に質問する事柄を、患者さんと一緒に整理するといったサポートをお勧めします。その際、患者さんが話すことを、否定したり遮ったりしないように気を配ることも大切です。ご家族にとっては手助けのつもりが、自分のやり方や思いの押し付けになってないか、時折患者さんご本人に確認しながらサポートしていきましょう。尚、全国の「がん診療連携拠点病院」に設置されているがん相談支援センターには、専門の相談員(看護師や医療ソーシャルワーカー)が常駐しており、がん治療に関する情報の提供や仕事や生活に役立つ支援制度の紹介、主治医とのコミュニケーションのお手伝いなどをしています。「他の患者さんはどうしているのだろう?」「他のご家族はどう対応したのだろう?」といった疑問でも構いません。不安の原因は十人十色ですが、多くの患者さんやご家族との面談経験がある専門家に聞いてみよう、という気持ちで相談されることをお勧めします。2)患者さんの希望を聞いてみましょうご家族が患者さんご本人の気持ちを100%理解することは不可能ですが、患者さんを理解しようという思いは伝わるもの。そうした家族の存在が、患者さんにとって心の支えになります。例えば、患者さんが何をしたいのか、どのようなことを希望しているのか、気持ちや希望を聞く時間を持ってみましょう。その際、患者さんがつらい状況にあると、ご家族に強い口調で接したり、話す内容が変化したりすることがあるかもしれません。このような時、ご家族が患者さんのことを思うがゆえにアドバイスをしたり、正しいか否かの判断をしたりしてしまいがちですが、できるだけ善し悪しの判断は避けて、「なるほど、そうだね」とか「気持ちがしんどいのね」など、患者さんの気持ちに寄り添って聞くようにしてみましょう。3)ご家族も自分の生活を大切に患者さん、ご家族のいずれにも当てはまることですが、診断を受けた直後の不安感、いらいら、不眠といったストレス症状は、通常は2~3週間を目安にだんだんと落ち着きを取り戻すといわれています。もし長期にわたり眠れない、涙が止まらない、といった状態が続く場合は、主治医や相談員などを通じて、メンタルヘルスや精神腫瘍科など、心の専門家の力を借りることも大切です。がんの治療が始まったら・・・方針が決まってがんの治療が始まると、ご家族はなんらかの形で患者さんの治療に貢献したいと、具体的なアプローチを探り始めます。例えば、患者さんが元気になるように「カラダによいものを食べさせてあげたい」、体力の低下を防ぐために「少しでも運動をしないと」といったことです。がんの治療中は、「食べなければ、元気にならない」「運動をしなければ、体力がつかない」など、固定観念をいったん捨ててみましょう。特に女性は、家庭の「食」を預かっているという自負から、まるで栄養士さんのように厳格に食を管理し始めてしまいがちです。「食べないのはよくない」という固定観念があると、患者さんの食の細さに不安が強まるかもしれませんが、まずは患者さんが口にしたい、食べたい、と思うものを少しずつ。それでいいのです。運動も同様です。推奨されている運動量は、あくまでも目安です。「生活の中で歩数を稼げればいい」と気楽に考えて、一緒に買い物に行くなど、「歩く、動く」を日常生活の中に組み込んでみましょう。患者さんのそれまでの生活パターンを大きく変えることなく、生活の中で自然に身体を動かすシーンがあれば大丈夫です。安心して話ができる場を確保する=相談支援センターの活用がん治療の進歩に伴い、最近の治療場所は入院中心から外来中心に移行しつつあります。入院をする必要がないとはいえ、患者さん自身の治療に伴う副作用や気持ちのつらさは図り知れないものがあります。ただし、患者さんがとてもつらい状況にあるからといって、生活のすべてを患者さん中心にしてしまうと、ご家族も疲れてしまいます。ご家族の方も、自分の気持ちや思いを語れる場所と時間を持つようにしましょう。また、これまで楽しみにしていた時間、コトがあるならば、その時間を継続して確保することも大切です。もし、家族の病気のことを友人や近所の人には話したくない、という場合は、病院が開催するがん教室や家族サロンなどに、ご家族で参加してみるもの一つの方法です。例えば、教室では病気や治療の全体像を学ぶ時間の他に、参加者同士での茶話会が開かれることがあります。他の家族の生の声を聞いたり、経験に共感して自分の体験や思いを話したりするうちに、それぞれの家族が直接向き合えなかったことに、気付きを得るようなことが起きてきます。みんな体験しているのだと分かると、安心して自分の気持ちが話せるようになり、そのことが別のご家族の支えにつながっていきます。がん教室や患者会などの開催情報も、相談支援センターなどで教えてもらえます。まとめ:患者さんも家族もがんに支配されないでがんの診断を受け治療を受けるのは患者さんですが、収入の変化、子育て、将来のことなど、がんを契機に変化する事柄に直面するという意味では、家族みんなで向き合う必要のある病気といえます。「つらいのは本人。だから、家族が頑張らないと」と、ご家族で無理に抱え込まず、主治医、看護師や薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど、話しやすい相手に、あなたが大切にしたいこと、困っていること、必要と思うこと、苦手なことなどについて話してみてください。そうすることで、よりそれぞれの状況に適した情報や制度、仲間との出会いが実現していくでしょう。患者さんもご家族も、がんに支配されないことが大切なのです。関連リンクがん診療連携拠点病院などを探す-病院一覧(全国)【国立がん研究センターがん情報サービス】※リンク先は、ファイザー株式会社のサイトを離れます。リンク先のサイトはファイザー株式会社の所有・管理するものではなく、ファイザー株式会社は、リンク先の内容・サービスについて、一切責任を負いません。【監修】国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター副センター長 坂本はと恵氏更新年月:2024年11月ONC46O008A