がん患者さんのお悩み相談室 ~がんと仕事~
がんと診断されたら、会社にはどう伝えるか?

Q.がんと診断されました。会社にどのように伝えればよいのか、悩んでいます

がんの治療期間など、会社が知りたいことをシンプルかつ正確に伝える

心配ごとが押し寄せてきても、あわてないで

がんと診断された直後の状態を、「ある日突然、洗濯機に放り込まれてグルグルと渦に巻かれているような気持ち。何が分からないのか、何に悩んでいるのか、何をどうすればよいのか、あらゆる方向から不安が押し寄せてきてパニック状態」と表現された患者さんがいらっしゃいます。特に仕事に関しては、収入、すなわちご自身やご家族の生活に直結することですから、さまざまな心配ごとが頭を駆けめぐり、「どうしよう」と悩まれるのは当然のこと。ほとんどの人が、がんについてはほんの少しの知識の中で、混乱してしまいます。まず、あわてずに一つひとつ正確な情報を得ていきましょう。

がんの疑いがあるとの説明から、正式な診断・治療方針が示されるまでには、1カ月程度時間がかかる場合があります。この段階では、「今は何も明らかになっていないので、会社に話せることはない」と思いがちですが、職場の方も心配されているかもしれません。この時期にはご自身の今の状況と見通しを、先に伝えておくとよいでしょう。「がんの疑いがあり、正式な診断を待ちながら病院に通っている」こと、「いつごろ何が分かりそうか」、「それまでに休みをとる可能性」など、その時点で分かっていること、先にならないと分からないことを整理して伝えれば、会社側も心構えができます。

会社が知りたい、治療期間の見通しと治療後の変化

伝える時には、会社が知りたいポイントを押さえておくとよいでしょう。2014年に、千葉県内の事業所を対象とした、「職場と医療機関の連携に関するアンケート調査」が行われました(千葉県内事業所実態調査・2014年)。調査項目の中で、「従業員が病気になった時に、会社が医療機関に聞きたいこと」について最も多かった回答は「治療に要する期間(90%)」、次いで「起こり得る副作用(35%)」でした。この調査結果から、会社が最も知りたいのは先の見通しと、治療後の身体の変化だと分かります。

調査結果ではさらに、「従業員が相談できる窓口(27%)」、「医療機関との連携方法(20.2%)」と続きます。このデータからは、会社や従業員の方ががんのことを相談できる窓口を知らない、医療機関に相談するために予約などの手続きや費用が必要だと思っている、といった様子がうかがえます。全国の「がん診療連携拠点病院」に併設されている相談支援センターなどでは、患者さんやご家族への支援はもちろん、職場の方々の相談窓口としても利用できます。特別な手続きや費用は必要ありませんので、ぜひ活用してください。

そして、相談支援センターでは、がんの診断および治療方針の説明を受ける際に、主治医に確認することを、患者さんと一緒に整理するお手伝いをしてくれます。会社が最も知りたい治療期間の見込みや、治療に伴う副作用が仕事にもたらす影響など、主治医に確認したいポイントを整理して、質問の仕方などもアドバイスしてくれるでしょう。こうした情報を事前に会社側と共有しておけば、双方が安心できるのではないでしょうか。厚生労働省と国立がん研究センターの研究グループが作成した、「仕事とがん治療の両立 お役立ちノート」などの資料も、とても参考になります。こうした役立つ資料の入手方法も、相談支援センターで教えてくれます。

がんと診断されたばかりの時期は、仕事のことだけでなく、あらゆる不安が押し寄せて混乱状態にある方がほとんどです。専門の相談員の力を借りて確認事項を整理することで、患者さんご自身の混乱も徐々に収まってきますから、まずは相談してみましょう。

上司や同僚にも正しい情報を

「会社にがんのことが分かったら解雇されるのでは」、「周りに迷惑をかけてしまうのでは」と、不安な気持ちを持つ方もいらっしゃるでしょう。特に属人的な業務を担っている人、少人数の会社に勤めている人などは、業務に直接大きな影響が出ることを恐れて、なかなかがんのことを切り出せず、会社側も様子がおかしいなと思いながらも、本人に聞けないままその場をやり過ごしてしまうかもしれません。

職場にがんのことを伝えるのは、多くの患者さんが悩む事柄です。相談支援センターにも、「みなさんはどうされていますか?」と尋ねてこられる人が多いといいます。上司や同僚は、患者さんの状況を知ることで、仕事上対応できることもあるでしょう。「もし、自分が逆の立場だったら? 知らされない方がいい?」と、冷静に自分に問いかけてみてください。知ってもらうことで、自分も職場も助かることは多いと思います。病気の時はお互いさまです。物事を複雑にせずできるだけシンプルに、大事な仲間には顔を合わせて直接話をした方がよいでしょう。

大切なのは、上司や同僚の方々にも「正しい情報」を伝えること。では、正しい情報とは何で、どこで手に入るのか?という疑問を持たれるかもしれません。インターネット上には、ありとあらゆる情報が出回り、まさに玉石混淆。国立がん研究センターのがん対策情報センターが運営するサイト「がん情報サービス」など、信頼し得る情報源を参考にしましょう。がん対策情報センターの情報は冊子版もあります。全国のがん診療連携拠点病院で入手することができますから、自分用ともう1冊、職場の方に伝えるツールとして使うこともお勧めです。

まとめ:治療期間の見込みや内容を正しく会社に伝え、共有する

仕事は生活を支える重要なファクターです。職場にはその時点で分かっていることを、正確に伝えるようにしましょう。特に治療方針が決まったら、「治療期間の見通し」と「副作用などによる働き方の変化の可能性」といった会社が知りたいポイントを主治医に確認して、伝えたいものです。診断初期は、治療のこと、仕事のこと、ご家族のことなど、考えることがたくさんあってご自身もとても大変だと思います。ひとりで抱え込まずに、医師や看護師、相談支援センターなどに相談しながら、、伝えるべきこと、準備しておくこと、心構えなどを整理しておきましょう。

【監修】国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター 坂本はと恵氏