がん患者さんのお悩み相談室 ~がんと仕事~
がん治療を終えて復職したが、以前と同じように働けない

Q.がん治療の後、仕事に復帰しました。以前と同じように働けずに落ち込んでしまいます

体力低下や薬の影響もあります。1年計画であせらず段階的にできることを増やしていきましょう

身体が回復するには1~2年かかる

復職してみると、「自宅での生活では気付かなかったが、思った以上に体力が落ちている」、「集中力が続かない」と、以前と同じように働けなくなった自分にショックを感じる方は少なくありません。治療中に落ちた体力や薬の影響などから身体が回復するのには、平均で1~2年かかるといわれています。つまり、発病前のような状態まで体力が回復し、自分の記憶にあるパフォーマンスで仕事ができるようになるには、1~2年くらいかかるのが普通だということです。「今」思うように仕事ができないからと、落ち込んだりあきらめたりするのではなく、体力や感覚が回復する1年先を見据えて、段階を踏んで「できること」を増やしていきましょう。

STEP1:通勤と日常生活に慣れる

復職直後は、会社に通勤できるか、日常生活が問題なくできるかどうかを確認する期間にしましょう。通勤電車に乗ることができる、食事や睡眠、料理や買い物、洗濯などの家事ができる、気分転換がはかれるなど、心と身体のバランスが整い、安定して穏やかに日々を過ごせるようになることを、目指します。3~4カ月程度を目安に、特にこの時期は自分自身の心と身体の安定を最優先にして、不眠や食欲不振、ストレスなどを感じないような生活を心がけます。

STEP2:仕事に慣れる

通勤や日常生活が安定してきたら、会社でも自分の責任の範囲で仕事ができるようになることを目指しましょう。おそらく誰もがパフォーマンスの低下により、以前とは仕事のやり方、関わり方、役割が変わり、仕事の内容に変化が生じているはずです。ここで多くの人が、いままでどおりに仕事ができない状況に、「自分の価値が下がったのでは?」と落ち込んだり悩んだりしてしまいがちですが、そう思う必要はまったくありません。

例えば、出産や育児、介護などのライフイベントで働き方が変わったからといって、その人の価値が損なわれることはありません。がん治療という大きなライフイベントを経験した患者さんも、働き方が変わったとしても、それが自分の価値を損なうことではないことを理解してください。まず仕事に慣れること、そしてできる業務の範囲を徐々に広げていきましょう。

STEP3:チームでの仕事ができるようになる

徐々に体力が回復してくると、集中力も高まってきます。仕事に慣れてきたら、次の段階に進んでみましょう。ここからはそれぞれの仕事の内容や責任範囲により変わりますが、同僚など、チームの一員として仕事ができるようになることを目指します。

STEP4:プロジェクトマネジメントなど、管理業務ができるようになる

発病前に管理職などに就いていた方は、次の段階としてプロジェクトマネジメントなど、以前のポジションと同様の仕事ができるようになることを目指してみましょう。少し時間はかかりますが体力が回復し、薬の影響がなくなっていくことで、以前と同様の仕事がこなせるようになっていきます。

まとめ:今の自分らしい、新しい生活を

復職には個人差はありますが、このように約1~2年かけて段階を踏んでいくとよいでしょう。会社の制度を活用しながら働き方を工夫して、徐々に元のペースで働けるよう、会社と相談しながら歩みを進めていくとよいと思います。職場復帰直後には、以前とは違う自分にショックを受けたり、会社に自分の居場所がないと感じたりするかもしれませんが、それは患者さんのせいではありません。以前できていたことができなくなるのは、体力低下や薬の影響があるためで、以前同様のパフォーマンスで仕事ができなくなった自分を、情けなく感じる必要はないのです。

自分が納得できるような働きやパフォーマンスを発揮できるようになるには、早くても1年はかかると心得て、計画的にステップを踏みながら、新しい仕事の仕方、新しい生活になじんでいきましょう。毎日が同じ景色に見えるかもしれませんが、1年経てば着実に前に進んでいます。

【監修】国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター 坂本はと恵氏