急性リンパ性白血病(ALL)を学ぶALLとは?

はじめに

急性リンパ性白血病(ALL[エーエルエル])は、造血幹細胞からリンパ系に分かれた幹細胞(リンパ系幹細胞)ががん化した病気です。リンパ系幹細胞は、成熟すると白血球の一部であるリンパ球になります。リンパ球は、免疫システムの重要な担い手として機能を果たします1)

リンパ性白血病の中でもがん化する速度が早いタイプの白血病が、急性リンパ性白血病(ALL)です。成人、小児ともに発症する可能性があります。

成人の場合、急性リンパ性白血病(ALL)の患者数に関する詳細なデータはありませんが、白血病の約2割がALLと考えられています1)
一方、小児ではALLは最もよくみられるがんで、特に2~5歳で発症することが多くなっています2)。1年間に約500人が新たにALLと診断されています2,3)

図:急性リンパ性白血病(ALL)の原因になるリンパ系幹細胞4)

急性リンパ性白血病(ALL)の原因

急性リンパ性白血病(ALL)を含む白血病の多くは、その発病原因がわかっていません。複数の遺伝子が少しずつ発症に関与し、さらにそこに環境要因が加わることで発症すると考えられています。
小児のALLではいくつかの発症に関与する遺伝子(感受性遺伝子といいます)が特定されていますが、そのような遺伝子変異を持つ子どもが実際にALLを発症することはまれであるため、事前に調べることは行われていません。また、環境要因としては農薬や放射線への曝露、小児期の感染など、さまざまなものが考えられています5)

急性リンパ性白血病(ALL)の症状

急性リンパ性白血病(ALL)の主な症状は、白血病細胞が骨髄や血液中で異常に増え、正常な赤血球、白血球、血小板がつくられなくなることであらわれます。
赤血球が少なくなると貧血の症状(息切れや動悸)が出ることがあります。正常な白血球が少なくなると抵抗力が低下し、感染症にかかりやすくなります。血小板が少なくなることで、出血しやすくなり、鼻血が出やすくなったり、あざができやすくなったりもします。

また、白血病細胞がさまざまな臓器・組織に浸潤(がん細胞が周囲の組織に入り込んで、増殖すること)すると、肝臓や脾臓、リンパ節が腫れて大きくなることがあります。
脳や脊髄などの中枢神経系に浸潤すると、頭痛やめまいなどの症状があらわれたりすることもあります。

若年者や小児の場合には、骨や関節の痛みを認めることが多く、歩行障害を訴えて受診することもあります6)

図:急性リンパ性白血病(ALL)の主な症状

【出典】

1) 薄井紀子:急性リンパ性白血病(ALL)の基礎と臨床 医薬ジャーナル社:2,4, 2016

2) 日本小児血液・がん学会編:小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン2016年版 金原出版:9, 2016

3) 国立がん研究センター:がん情報サービス 白血病〈小児〉 患者数(がん統計)
https://ganjoho.jp/public/cancer/leukemia/patients.html (2024/7/26参照)

4)国立がん研究センター:がん情報サービス 急性リンパ球性白血病/リンパ芽球性リンパ腫
https://ganjoho.jp/public/cancer/ALL/index.html#anchor1 (2024/7/26参照)

5) Malard F, et al.: Lancet 2020; 395: 1146 1146-62.

6)秋山秀樹:“第Ⅱ章 1. 血液、一般検査” 急性リンパ性白血病(ALL)の基礎と臨床 薄井紀子編 医薬ジャーナル社:32, 2016

【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生

更新年月:2024年9月

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