急性リンパ性白血病(ALL)を学ぶ薬物療法など急性リンパ性白血病(ALL)の薬物療法血液のがんの治療では、全身に作用する薬物療法が中心となります1)。急性リンパ性白血病(ALL)では、抗がん剤を用いた化学療法のほか、がんにかかわる特定の分子に作用する分子標的薬などが使われることもあります1-4)。化学療法(抗がん剤など)抗がん剤は作用のしかたによって、いくつかの種類に分類されます。急性リンパ性白血病(ALL)の化学療法では、下記のようなさまざまな作用をもつ抗がん剤のほか、ステロイドなどを組み合わせて使用します4,5)。表:ALLの化学療法で用いられる主な薬(出典4,5)より作表)分類作用代謝拮抗薬がん細胞の増殖を抑制する抗がん性抗生物質がん細胞膜を破壊するがんのDNAの合成を抑える微小管作用薬細胞が分裂するのに重要な微小管の働きを止めるアルキル化薬がん細胞のDNAを破壊するその他がん細胞が増えるのに必要な栄養素を分解し、栄養が行かないようにする分子標的薬①チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)フィラデルフィア(Ph)染色体がある場合は、フィラデルフィア染色体がつくりだすBCR::ABL蛋白の働きを阻害するチロシンキナーゼ阻害薬(TKIともいいます)という飲み薬が用いられます。TKIは慢性骨髄性白血病(CML)の治療に広く用いられています。CMLの治療では主にTKI単独で用いられますが、ALLの治療では化学療法やステロイドなどと併用することが多くなっています2,3)。②抗体医薬品白血病細胞の表面にある特定の蛋白に結合し、白血病細胞が増えるのを抑える薬です。現在日本では2種類の抗体医薬品があり、それぞれ異なる作用をもっています6)。抗体医薬品の対象となるのは、下記の条件に当てはまる患者さんです2,7,8)。B細胞性の急性リンパ性白血病(B-ALL)でかつ検査で特定の蛋白がみられた患者さんのうち、下記のいずれかに当てはまる場合初期治療(寛解導入療法)を行っても十分な効果が得られなかった場合再発の場合細胞療法(CAR-T(カーティー)療法)免疫療法の一種です。患者さんの血液から免疫にかかわる細胞(T細胞)を取り出し、白血病細胞の表面にある特定の蛋白に反応するように加工し、細胞の数を増やしたら患者さんの体内に戻します。体内に戻したT細胞が白血病細胞を攻撃し、効果を発揮します9)。CAR-T療法の対象となるのは25歳以下で、かつ下記の条件に当てはまる患者さんです10)。B細胞性の急性リンパ性白血病(B-ALL)でかつ検査で特定の蛋白がみられた患者さんのうち、下記のいずれかに当てはまる場合標準的な化学療法を2回以上行っても効果が得られなかった場合再発後に標準的な化学療法を1回以上行っても再発した場合造血幹細胞移植ができない、または移植後に再発した場合【出典】1) 宮崎仁:もっと知りたい白血病治療 患者・家族・ケアにかかわる人のために 第2版 医学書院:30, 20192) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版 金原出版:69-70, 86-87, 106, 20233) 日本小児血液・がん学会編:小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン2016年版(第3版).金原出版:8, 22-23, 2016https://www.jspho.org/pdf/journal/childhood_leukemia_lymphoma_guideline/Acute_lymphocytic_leukemia_ALL.pdf (2024/7/26参照)4) 医療情報科学研究所編:病気がみえるvol.5 血液 第3版.メディックメディア:130-131, 20235) 国立がん研究センターがん対策情報センター編著:患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版:139, 141-142, 2017https://ganjoho.jp/public/qa_links/book/public/pdf/31_139-149.pdf (2024/7/26参照)6) 松村到編:急性白血病診療テキスト 中外医学社:258-259, 270-273, 20207) イノツズマブ オゾガマイシン製品電子添文 2024年3月改訂(第2版)8) ブリナツモマブ製品電子添文 2021年5月改訂(第2版)9) 国立がん研究センター:がん情報サービス 免疫療法 免疫療法 もっと詳しくhttps://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html#anchor2 (2024/7/26参照)10) チサゲンレクルユーセル電子添文 2024年3月改訂(第9版)【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生更新年月:2024年9月ONC46N019B