急性骨髄性白血病(AML)を学ぶ成人AMLの主な治療法成人急性骨髄性白血病(AML)の主な治療法初めて急性骨髄性白血病(AML)を発症した場合、治癒を目指した強力な化学療法が行われます。しかし、強力な化学療法は身体的な負担も大きいため、副作用に耐えられるかどうか、年齢や臓器の状態、合併症の有無などから慎重に判断されます。最近では、FLT3(フラットスリー)という遺伝子に変異があるAMLに効く治療薬(分子標的薬※といいます)も登場しており、遺伝子変異の有無も治療薬を選ぶ際の基準になります。寛解導入療法で完全寛解を達成しなかった患者さん、完全寛解を達成した後に再発した患者さんに対しては、救援療法と呼ばれる薬物療法が行われます1,2)。※分子標的薬:がん化の原因となっている分子や、がん細胞に発現している分子を標的とした薬剤。65歳未満の場合1-3)通常、65歳未満の患者さんでは、寛解導入療法として、2種類の薬剤を用いた強力な化学療法が行われます。寛解導入療法によって寛解が得られた場合は、続けて再発を防ぐための地固め療法(寛解後療法)を行います。AMLでは遺伝子や染色体の検査結果から病気の見通し(予後)を評価して、寛解後に使用する薬剤が選択されます。化学療法だけでは良好な予後が得られないと判断された場合には、造血幹細胞移植が行われることもあります。FLT3遺伝子に変異(FLT3-ITD変異)がある場合は、寛解導入療法と地固め療法の化学療法にFLT3阻害薬と呼ばれる分子標的薬を併用します。地固め療法が終わった後も、維持療法としてFLT3阻害薬の服用を続けます。高齢(65歳以上)の場合1)高齢の患者さんでは化学療法による副作用が起こりやすいため、臓器や全身の状態などから、強力な化学療法による副作用や合併症に耐えられるかを慎重に判断します。①強力な化学療法が可能な場合強力な化学療法が行えると判断された場合、65歳未満の患者さんと同様に、2種類の薬剤を用いた寛解導入療法が実施されます。化学療法だけでは良好な予後が得られないと判断された場合には、造血幹細胞移植が行われることもあります。②強力な化学療法が行えない場合臓器の状態や合併症の有無、患者さんやご家族の希望など、さまざまな要素を考慮して強力な化学療法が適さないと判断された場合は、BCL-2阻害薬という分子標的薬を用いた治療が検討されます。また、治療の強度を落とした化学療法や、症状を軽減させるための治療が行われることもあります。寛解に到達しなかった場合、再発した場合1)完全寛解を達成した後に再発してしまった場合や、寛解導入療法で完全寛解を達成できなかった場合は、「救援療法」と呼ばれる治療が行われます。65歳未満の患者さんでは、薬剤の量を増やした化学療法が行われます。適切と判断された場合には造血幹細胞移植が行われることもあります。FLT3遺伝子に変異がある場合は、FLT3阻害薬が用いられます。この場合も、適切と判断された患者さんでは造血幹細胞移植が検討されます。強力な化学療法が適さないと判断された場合には、治療の強度を落とした化学療法や分子標的薬、症状を軽減させるための治療などが行われます。【出典】1) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版 金原出版:14-16, 20232) 日本血液学会編:血液専門医テキスト 改訂第4版 南江堂:274-278, 20233) キザルチニブ電子添文2023年5月改訂(第4版、効能変更、用法変更)4) 医療情報科学研究所編:病気がみえるvol.5 血液 第3版.メディックメディア.130, 2023【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生更新年月:2024年9月ONC46N020B