急性骨髄性白血病(AML)を学ぶ化学療法の副作用

化学療法の主な副作用について説明します。副作用の症状があらわれたら、すぐに医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフに相談してください。

吐き気・嘔吐、食欲低下

吐き気や嘔吐が長く続いたり、それに伴って食欲の低下などが起こることがあります。吐き気については、吐き気止め(制吐剤)などを使用します。また、食欲がないときは無理に食べない、食べられる場合も満腹まで食べないほうが吐きにくくなります1)

下痢、便秘

腸の動きが弱くなって便秘になったり、食欲が低下し、食べる量が減ることで便秘になることがあります。便秘の程度によっては下剤を服用したり、坐薬や浣腸薬が使われることもあります1)。 
また、抗がん剤によって腸の粘膜に炎症が起きたり、感染によって下痢が起こることもあります。下痢の程度によっては下痢止めなどを服用します1)

脱毛、皮膚・爪の障害

急性白血病に用いられる抗がん剤の多くは脱毛が起こる可能性があります。通常、脱毛は永久的ではなく、治療が終了すれば再び生えてきます1)。 
このほか、皮膚の色素沈着や爪の変化が起こることもあります1)

骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板減少)

寛解導入療法や地固め療法では骨髄をからっぽの状態にするため、白血球、赤血球、血小板の数が著しく減少します。この期間は貧血や感染症、出血が起こりやすくなるため、厳重な管理が行われます1)

  • 白血球の減少:白血球(特に好中球)が減少すると、免疫の働きが低下し、細菌やウイルスなどに感染しやすくなります。敗血症や肺炎などの命にかかわる状態になることもあるため、徹底した感染対策のもとで治療を行います1)
  • 赤血球の減少:立ちくらみ、息切れ、めまい、ふらつき、頭痛、胸の痛みなどの貧血症状が起こることがあります。赤血球の輸血などで対処します1,2)
  • 血小板の減少:出血しやすくなり、青あざ(皮下出血)や鼻血、歯ぐきの出血などが起こりやすくなります。血小板の輸血などで対処します1)

口内炎

抗がん剤が口の中の粘膜に作用したり、感染によって炎症が起こります。痛みを伴ったり、食事がしみたりすることもあります。こまめにうがいをする、やわらかい歯ブラシで歯磨きをするなど、口の中を清潔に保つことが大切です1,3)

心筋障害

AMLの治療に使われる抗がん剤のなかには、心臓に影響するものがあります。薬の投与量と関連することがわかっており、治療期間全体を通して一定量を超えないように注意して治療が行われます。また、心筋障害の予防と早期発見のため、治療開始前に心臓の状態を検査で確認し、治療中も定期的に検査を行います4,5)

肝機能障害

肝臓の機能を示す検査値が異常を示すことがあります。自覚症状を伴わないことが多いため、定期的に血液検査を行って調べます。なかには、倦怠感や食欲不振、白目や皮膚が黄色くなる(黄疸おうだん)、尿の色が濃くなるといった症状があらわれることもあります5)

【出典】

1) 宮崎仁:もっと知りたい白血病治療 患者・家族・ケアにかかわる人のために 第2版 医学書院:52-58, 2019

2) 国立がん研究センター:がん情報サービス 症状を知る / 生活の工夫 さまざまな症状への対応 貧血[更新・確認日:2020年02月20日] 
https://ganjoho.jp/public/support/condition/anemia/index.html (2024/7/26参照)

3) 国立がん研究センターがん対策情報センター編著:患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版:146, 2017 
https://ganjoho.jp/public/qa_links/book/public/pdf/31_139-149.pdf (2024/7/26参照)

4) 小室一成監修、日本腫瘍循環器学会編集委員会編:腫瘍循環器診療ハンドブック メジカルビュー社:10-11, 2020

5) 吉村知哲、田村和夫監修:がん薬物療法副作用管理マニュアル 第2版 医学書院:202-213, 239-250, 2021

【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生

更新年月:2024年9月

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