急性骨髄性白血病(AML)の治療方法薬物療法

白血病の治療効果判定は、寛解かんかいという状態であるか否かで判断します。通常は骨髄穿刺の検査が必要となります。その為、白血病の治療では何度も骨髄穿刺の検査を行うことになります。1,2

化学療法1

近年、急性骨髄性白血病(AML)の治療は非常に進歩してきました。治療の基本は、骨髄中に増えた白血病細胞を死滅させ、正常な血液細胞を増やすというやりかたです。

そして、抗がん剤を用いた化学療法は、急性骨髄性白血病(AML)の第一の治療法になります。
化学療法による治療は、「寛解導入療法」「地固め療法」の順でおこないます。

寛解導入療法1,3

第一段階となる寛解導入療法の目標は、文字通り「寛解」になることです。この寛解とは、骨髄中に存在する白血病細胞が全体の5%未満の状態です。通常7~8日間抗がん剤が投与されます。その後、白血病細胞だけではなく正常な血液細胞も骨髄の中から減少します。

この時、赤血球や血小板が極端に減少した時には輸血が行われます。白血球は輸血することはできませんので、抗がん剤の投与の後、自然に白血球が増えてくることを待ちます。この期間は約4週間くらいです。

白血球が回復した時に骨髄穿刺を行い、寛解状態であるかどうかを調べます。およそ7~8割の患者さんで寛解状態になることが期待できます。

●急性前骨髄球性白血病(M3)の治療1,3

急性骨髄性白血病(AML)の中でも急性前骨髄球性白血病(M3)というタイプは治療に用いる抗がん剤が異なります。

急性前骨髄球性白血病(M3)においては、他のタイプの治療で用いられる抗がん剤に加えてレチノイン酸というビタミンA誘導体(all-trans retinoic acid:ATRA(アトラ))が用いられます。

その為、寛解導入療法中には他のタイプの白血病の治療ではみられないアトラによる副作用と、出血をおこしやすい状況があります。これを乗り切ることができれば、急性前骨髄球性白血病(M3)は急性骨髄性白血病(AML)の中でも非常に予後の良いタイプといえます。

※ 急性骨髄性白血病(AML)の分類1,3

急性骨髄性白血病(AML)の分類法のひとつにFAB分類があります。FAB分類では、増殖する白血球細胞の種類などから急性骨髄性白血病(AML)をM0~M7まで8つのタイプに分類しています。

表.FAB分類

M0 急性骨髄性白血病(AML)再未分化型
M1 急性骨髄性白血病(AML)未分化型
M2 急性骨髄性白血病(AML)分化型
M3 急性前骨髄球性白血病(APL)
M4 急性骨髄単球性白血病(AMMoL)
M5 急性単球性白血病(AMoL)
M6 急性赤白血病(AEL)
M7 急性巨核芽球性白血病(AMKL)

白血病細胞を死滅させる化学療法により、多くの患者さんは治療中に不快な副作用や合併症を経験します4,5

これらの副作用に関しての詳細は後述します。

●高齢者の治療1

白血病の治療は、非常に強い抗がん剤を用います。

その為、高齢者の方(65歳以上)では、年齢や体の状態、心臓、肝臓、腎臓などの臓器の状態を考慮して抗がん剤の量や投与日数を減らすことがあります。また、ご高齢の患者さんや状態の非常に悪い患者さんの場合には寛解をめざすのではなく白血病細胞を減らすことを目的とした治療を行うこともあります。

地固め療法1,6,7

寛解導入療法で寛解が得られたと判定されたら、血球細胞が回復したことを採血により確認した後、すぐに、第二段階となる地固め療法を行います。

この段階の目標は、寛解導入療法で5%未満になった白血病細胞を更に死滅させ、根治させることです。地固め療法でも強い抗がん剤が使われますが、これも、治療後の白血病の再発を防ぐために必要な治療なのです。

最近では、この地固め療法で強力な治療を行う事で、以前行われていた地固め療法後の維持・強化療法がおこなわなくてもよいとされています。

地固め療法でも強い抗がん剤が使われるので、寛解導入療法と同様の副作用や合併症が現れます。また、治療後に血液細胞が減少した際には、その程度に応じて赤血球や血小板の輸血が必要になることもあります。

地固め療法が終了し、効果判定にて寛解を維持していた場合は、急性骨髄性白血病(AML)のタイプや年齢や体の状態を考慮して、治療を行わずに経過をみる場合と造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植)を行う場合があります。

この基準に関しては日本造血細胞移植学会よりガイドラインが出ていますので参考にしてください。

分子標的療法1

分子標的療法とは、がんの原因となっている物質や白血病細胞に存在する物質を標的または利用した治療法です1。AMLの分子標的療法では、分子標的薬と抗体薬物複合体(ADC)が用いられます。

分子標的薬1,8,9

分子標的薬は、白血病細胞に存在する特定の分子(タンパク質)に結合し、白血病細胞が増えないようにする薬です。特定の白血病細胞を狙い撃ちするため、正常な細胞に大きなダメージを与えにくいという特徴があります。一方で、従来の抗がん剤とは違った副作用があらわれる可能性があります。分子標的薬の対象となる患者さんは、既存の化学療法で十分な治療効果が得られない患者さんや再発した患者さんです。

抗体薬物複合体(ADC)1

抗体薬物複合体(ADC)は、白血病細胞に結合する抗体に、白血病細胞を攻撃する抗がん剤を結合させた薬です。抗体薬物複合体(ADC)は、白血病細胞に結合した後、白血病細胞の中に取り込まれます。細胞内に取り込まれた抗がん剤は、抗体から離れて、白血病細胞を攻撃します。分子標的薬と同様に白血病細胞を狙い撃ちするため、正常な細胞に及ぼす影響が少ないという特徴があります。抗体薬物複合体の対象となる患者さんは、既存の化学療法で十分な治療効果が得られない患者さんや再発した患者さんです。

1. 医療情報科学研究所 編集.病気がみえるvol.5 血液 第2版.メディックメディア.2017

2. 国立がん研究センターがん情報サービス

3. 日本血液学会 編.造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版.金原出版.2018

4. 医療情報科学研究所 編集.薬がみえるvol.3.メディックメディア.2016

5. 岡元るみ子,佐々木常雄 編.がん化学療法副作用対策ハンドブック第3版.羊土社.2019

6. 永井正.図解でわかる 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫.法研.2016

7. 日本造血細胞移植学会.造血細胞移植ガイドライン 急性骨髄性白血病 第3版(2019年1月)
https://www.jshct.com/uploads/files/guideline/03_01_aml03.pdf(2020年7月22日閲覧)

8. 日本臨床腫瘍薬学会 監修,遠藤一司ほか編.がん化学療法レジメンハンドブック改訂第4版.羊土社.2015

9. 清井仁.Pharma Medica 37(10):25-28,2019

※ リンク先のサイトはファイザーが所有・管理するものではなく、ファイザーはこれらのサイトの内容やサービスについて一切責任を負いません。

【監修】東北大学大学院医学系研究科 血液・免疫病学分野(血液・免疫科)教授 張替秀郎 先生

更新年月:2020年11月