がんとつきあう(がん治療の副作用)骨髄抑制の症状と原因
骨髄抑制の症状
骨髄抑制は、抗がん剤(化学療法や分子標的薬)や放射線によるがん治療に伴う副作用のひとつですが、どの血液成分がダメージを受けたかにより症状が異なります。
主な症状は、次の通りです。
感染症
白血球の減少によってもたらされる症状です。白血球の減少は多くの化学療法で見られる現象で、白血球が減少する時期や量は、化学療法の種類や患者さん個人によっても異なります。
白血球は、外部から体内へ侵入してきたウイルスや細菌を攻撃する免疫機能を担っています。化学療法をはじめとするがん治療により白血球が減少すると、病原菌に対する抵抗力が弱まるため、身体のあらゆるところに感染症を引き起こしやすくなります。
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- 38℃以上の発熱
- 寒気、ふるえ、咳、のどの痛み
- 口内炎、歯肉痛、虫歯
- 下痢・腹痛
- 肛門痛・排尿時の痛み、血尿、頻尿、残尿感
- 皮膚の
発疹 、発赤
感染部位は、口、肺、皮膚、尿路、肛門、性器と多岐にわたります。上記のような症状が見られる場合は感染症の可能性がありますので、すぐに医療スタッフに相談しましょう。
貧血
赤血球の数が減少することでもたらされる症状です。赤血球は、肺から取り込んだ酸素を身体全体に届ける大事な役割を担っています。白血球・赤血球・血小板で成り立つ血液細胞の9割を赤血球が占めています。
赤血球が減少したり、赤血球の中で酸素を運ぶ役割のヘモグロビンの働きが低下したりすると、貧血症状が見られるようになります。
赤血球の寿命は120日と長いため、化学療法や放射線治療によってすぐに重度の貧血を生じることはあまりありませんが、治療を重ねるうちに次第に症状が見られるようになります。
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- 少しの動作で息切れ
- 疲労・倦怠感
- めまい
- 脈拍の増加、動悸
- 食欲不振
- 便秘
- 結膜が白い
- 手足が冷たい
- 爪の色が白い
- 顔色が青白い
- 頭痛、頭が重い
- 耳鳴り
貧血の症状は、治療開始後2週間頃から見られることが多いようですが、自覚症状がないことも少なくありません。重症化させないように、気になる症状を感じたら、無理をせず、医療スタッフにも伝えるようにしましょう。
出血
血小板減少に伴う症状です。血小板は、血液を構成する血液細胞のひとつで、出血を止める働きがあります。血小板が少なくなると、出血しやすくなるだけでなく、血が止まりにくくなります。
血小板の減少は、抗がん剤(化学療法や分子標的薬)の種類にもよりますが投与後1週間~10日頃から、放射線治療では2週間頃から見られるといわれています。
- <症状>
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- 内出血(皮下出血)
服装による締め付けや長時間同じ姿勢でいることなどによる圧迫が原因で生じます。 - 口内の出血
歯ブラシによる歯磨きで、歯ぐきから出血することがあります。 - 鼻血
鼻をかむことで粘膜が傷つき、出血することがあります。 - 血便・血尿
排便時の力みなどが原因で出血することがあります。 - 皮膚の点状出血、斑状出血
お風呂で体を洗ったときやかゆくて皮膚をかいたときなどに出血することがあります。
- 内出血(皮下出血)
血小板が減少することで、日常生活の動作の中でも出血が見られるようになることがあります。出血が続く場合には、医療スタッフに相談しましょう。
骨髄抑制の原因
抗がん剤(化学療法や分子標的薬)治療や放射線治療によって、血液細胞をつくる組織である骨髄の働きが抑制されると、血液細胞を構成する3つの要素である白血球・赤血球・血小板が減少します。
この3つの血液成分が減少することで、それぞれ感染症や貧血、出血といった症状がもたらされます。自覚症状に乏しく、自分では気が付かないこともあるため、定期的な検査を行い、日頃からのちょっとした変化を見逃さないようにすることが大切です。
気になる異変や症状を感じたら、医療スタッフに相談し、早めの対応へとつなげましょう。
【監修】埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科 教授 佐伯俊昭 先生