がんとつきあう(がん治療の副作用)皮膚障害の対処法
手足症候群、皮疹(ひしん)、色素沈着、皮膚の乾燥、アレルギー、爪の変化など

抗がん剤(化学療法)や分子標的薬の副作用として、手足症候群、皮疹(ひしん)、色素沈着、皮膚の乾燥、アレルギー、爪の変化などの皮膚障害があります※1,2。薬の服用にあたり、医師から副作用の可能性を説明された場合には、注意深く皮膚の状態を観察するようにしましょう。
その一方で、皮膚障害は、がんやお薬の種類によっては、お薬が効いていることの現れだと言われています※3。つらい皮膚障害ですが、主治医のアドバイスを受けながら、適切なケアを心がけ上手に付き合っていくことが大切です※3

日常生活のポイント

石鹸と白いタオル
皮膚障害を生じると、手元の細かな作業に困難を伴うことがあります※4。手足症候群に見られるように、症状が悪化すると立ったり歩いたりする日常動作にも影響が出ることがあります※4。これらの症状を和らげたり、予防したりするためには、日常生活で「清潔・保湿・保護」を心がけることが重要です※1

スキンケア

  • 皮膚に十分なうるおいを与えるために、保湿剤を1日2~3回優しく塗って保湿しましょう※3
  • 男性の場合、ひげをそるときは皮膚の負担が少ない電気シェーバーを使用しましょう※5

入浴

  • お風呂のお湯はぬるめにし※6、長時間の入浴は避けましょう※6
  • 皮膚のバリア機能をなるべく失わないよう、弱酸性または低刺激のソープやシャンプーを使用しましょう※7
  • 泡状のソープを使うか泡立て用のネットでしっかりと泡立てから、素手で優しく洗うようにしましょう(ナイロンネットやタオルは使用しない)※2
  • スキンケアのため皮膚に塗った保湿剤や皮膚用のお薬も、しっかり洗い流すよう注意しましょう※6。せっけんの成分も残らないよう十分にすすいでください※2
  • 水分は柔らかいガーゼやタオルを使用して、擦らないように押さえて拭うようにしましょう※2
  • 入浴やシャワーのあとは乾燥を避けるため、なるべく早く保湿しましょう※6

紫外線

  • 紫外線による刺激を避けるため日光に直接当たらないよう気を付けましょう※1
  • 外出時は、日傘の使用、長袖・帽子・手袋の着用などで、肌の露出を抑えるようにしましょう※7
  • 日焼け止めは低刺激でSPF30以上/PA++以上のものが勧められます※3。汗や衣類との接触などで効果が低下するので、2~3時間ごとに塗り直すことが必要です※4

その他のポイント

  • 水仕事を行う場合には、手袋を使用しましょう※3
  • 衣類は、部分的な肌の締め付けがなく、縫い目が肌に当たらない、綿素材のものを選びましょう※8

爪の変化への対処法

抗がん剤(化学療法)や分子標的薬の副作用として、爪が薄くなったり、割れたり、時にははがれ落ちたりすることもあります※4。対処法としては以下の方法があります。

  • 爪を清潔に保ちましょう※4
  • 爪や爪の周りをクリームなどでしっかり保湿しましょう※4
  • 爪を短く切ることや深爪をしないよう注意しましょう※4
  • 爪が薄くもろくなって気になるような場合には、マニキュアで爪を保護すると不便さを解消できることもあるようです※4。ただし、痛みを感じる場合は行わないでください※4
  • ネイルリムーバーは皮膚に刺激を与えるため、できるだけ使用を控えてください※4

爪の切り方

  • 入浴のあとなど爪が柔らかくなっている時に、爪を四角い形に整えます※4
  • 爪が弱くなっている場合にはヤスリを使用しましょう※4
  • 爪の角はヤスリを使って丸く削りましょう。その際、深く切り込まないように注意してください※4
  • 角を深く切り込み過ぎると、巻き爪や陥入爪(かんにゅうそう:爪の角が周りの皮膚に食い込んでしまい、痛みや腫れを生じる状態のこと※9)の原因になることがあるので気を付けましょう※4
爪の切り方

患者さん自身がセルフケアを行うことで、つらい症状を和らげたり予防したりできます※5, 6。皮膚を清潔に保ち、乾燥を防いで、皮膚に圧力をかけたり傷つけたりしないようにすることが大切です※5, 6

皮膚や爪に症状が現れた場合、その程度によっては休薬やお薬の減量となることもあります。気になる症状が見られた場合には我慢したりせず、早めに医療スタッフに相談しアドバイスを受けるようにしましょう。

※1 国立がん研究センター中央病院 色素沈着や皮膚の変化の対処法
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/nursing/power/010/100/index.html 2023/4/21参照

※2 国立がん研究センターに学ぶ がん薬物療法看護スキルアップ, 編集; 国立がん研究センター看護部, 南江堂, 2018年2月, 東京.

※3 国立がん研究センター東病院 皮膚障害について
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/pharmacy/kouganzai/supportivecare_skin.html 2023/4/21参照

※4 がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版, 日本がんサポーティブケア学会 編, 金原出版, 2021年10月, 東京.

※5 がん看護実践ガイド 分子標的治療薬とケア, 監修; 一般社団法人日本がん看護学会, 医学書院, 2016年11月, 東京.

※6 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群 平成22年3月(令和元年9月改定)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1q01_r01.pdf 2023/4/19参照

※7 国立がん研究センター中央病院看護部 皮膚の変化・色素沈着
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/nursing/division/support_card/2.pdf 2023/4/21参照

※8 根上リサ. ざ瘡様皮疹・皮膚乾燥・爪囲炎 ~治療継続のためのケアとセルフマネジメント支援~. がん看護2019; 24: 728-732.

※9 日本形成外科学会 陥入爪、巻き爪
https://jsprs.or.jp/member/disease/other/kannyuso.html 2023/4/21参照

【監修】帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科 渡邊清高 先生

更新年月:2023年11月

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