肺がんの基礎知識肺がんとは

肺がんとは肺にできるがんのことで、近年、患者さんの数が増加しています。最初に、肺がんではどのような症状がみられるのか、肺がんの原因にはどのようなものがあるのかについて知りましょう。

肺がんとは※1

肺は呼吸をするための器官で、呼吸によって吸い込んだ空気から酸素を体の中に取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外に出す働きをしています。

肺は左右の胸部に1つずつあり、右肺は3つ、左肺は2つに分かれています。口から入った空気は、気管を通り、左右の肺に分かれたあとでさらに枝分かれし(気管支)、最後には酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞はいほうにたどり着きます。肺は、胸腔きょうくう(胸壁という胸部を作る壁で囲まれた空間)の中にあり、胸膜という二重の膜で包まれています。内側の胸膜は肺の表面を包み、外側の胸膜は胸壁と接していて、その間を胸水が満たしています。

肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞がなんらかの原因でがん化したものです。進行するにつれてまわりの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって転移することもあります。転移しやすい場所はリンパ節、反対側の肺、骨、脳、肝臓、副腎です。

肺の構造

肺の構造

国立がん研究センター がん情報サービス 肺がん 基礎知識
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/index.html 2022/7/21参照

※1 日本肺癌学会編: 患者さんのための肺がんガイドブック 2021年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む, 金原出版: 16-17,21-22, 2021

がんは遺伝子変異によって起こる※2

私たちの体は非常に多くの「細胞」で構成されています。細胞は体のさまざまな部分で、一定のルールに基づいて分裂増殖を繰り返していますが、そのルールを決めているのは、細胞の核に存在する遺伝子です。これらの遺伝子には自動車のブレーキ、あるいはアクセルなどのような働きをもつものがありますが、なんらかの原因で異常(変異)が起こると、ブレーキがきかなくなったり、アクセルを踏みすぎてしまったといった状態になります。そのため、分裂増殖のルールに従うことができなくなり、細胞が限りなく増殖してしまいます。このように限りなく増殖する性質をもった細胞が「がん細胞」であり、「がん細胞」が集まったものが「がん」と呼ばれます。

※2 西日本がん研究機構(WJOG)編: 患者さんのためのガイドブック よくわかる肺がんQ&A, 金原出版: 2, 2014

【監修】近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門 主任教授 中川和彦 先生

更新年月:2022年11月

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