肺がんの治療と副作用放射線療法と副作用※1,2

放射線療法は、放射線を体の外から照射してがん細胞を傷つける治療法です。

その目的には、①がんの完治を目指す(根治)、②がんの痛みや気道、食道、血管などの圧迫による症状を取り除く(緩和医療)、③がんが増大して引き起こす症状や転移などによる再発を減らす(予防)、の3つがあります。

放射線療法は比較的、他の治療よりも体への負担が少ないというメリットがあります。その一方で、①安全に利用できる放射線の量や範囲に限界がある、②効果が出るまで時間がかかる、③治療後にも放射線の影響が出てくることがある、などのデメリットもあります。

放射線療法

 

放射線療法の主な副作用

副作用は、がん細胞の周りにある正常な細胞にも放射線があたることが原因となり、治療中や治療後に生じることがあります。以下に解説している症状がひどかったり長引く場合、あるいはこの他にも気になる症状があらわれた場合には、医師に相談してください。

 

皮膚炎※1

皮膚や粘膜は放射線の影響を受けやすいため、治療が始まって2週間くらいすると放射線をあてた部分が日焼けしたように炎症を起こして赤くなったりします。これはそのうち黒ずみ、皮膚が入れ替わってもとに戻っていきますが、こすったりするとただれたり潰瘍ができることがあります。

炎症を起こした部分はできるだけ刺激を与えないようにします。かゆみや痛みを伴うときは、冷水で絞ったタオルを軽くあてるようにするとよいでしょう。症状がひどいときはステロイド軟膏やかゆみ止めが有効なことがあるので、医師へ相談するようにしましょう。

 

食道炎※1

肺がんの放射線療法では、胸の中央にあるリンパ節にも放射線を照射することがあり、食道に放射線があたって炎症が起こることがあります。

症状としては、胸やけ、食べ物が喉につかえる、食道がチクチク痛むなどが起こります。放射線療法を始めて2週間くらいから治療終了後2週間くらいの時期にあらわれます。

治療が終了すると症状は徐々に改善しますが、このような時期にはやわらかい、刺激の少ないものを食べるように心掛けてください。症状がひどいときは、粘膜を保護するお薬や痛み止めを処方してもらうとよいでしょう。

 

肺臓炎※1

照射する範囲が広い場合に、咳や熱、息切れなどの症状が、治療の半ばくらいからみられることがあり、これが肺臓炎と呼ばれます。

高熱やひどい息切れなどがある場合は、重症化するおそれがあります。ステロイド剤が有効なことがありますので、医師の指示を受けましょう。

 

脊髄炎※1

正常な細胞が耐えられる放射線量(50Gy程度)以上の治療で生じる副作用です。炎症により、しびれや麻痺などがみられます。

※1 渡辺俊一, 大江裕一郎, 伊丹純ほか: 国立がん研究センターの肺がんの本, 小学館クリエイティブ: 62-67, 2018

※2 西條長宏ら編: インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肺がん 改訂5版, 医薬ジャーナル社: 70,86-95, 2017

【監修】近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門 主任教授 中川和彦 先生

更新年月:2022年11月

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