多発性骨髄腫(MM)を学ぶ多発性骨髄腫とは?はじめに多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)は、血液細胞の一種である「形質細胞」ががん化して骨髄腫細胞となり、骨の中心部にある骨髄で異常に増える病気です1,2)。形質細胞は、白血球のなかのリンパ球の一種であるB細胞から分化してできる細胞です(図1)。多発性骨髄腫は、すべてのがんの約1%、すべての血液がんの約10%を占めています1)。2021年の日本の統計では、1年間に7,756人が新たに多発性骨髄腫と診断されています3)。高齢者に多く、多発性骨髄腫と診断された患者さんの年齢中央値は67歳であったことが報告されています4)。近年、治療の進歩によって、病気の経過や今後の見通し(予後)は徐々によくなっています。ただ、治療により症状が軽減しても、やがて再発することが知られています2)。図1:血液細胞がつくられる過程(造血)と形質細胞ができるまで[出典2より作図]多発性骨髄腫が起こる仕組み形質細胞は、「免疫グロブリン」と呼ばれる抗体(こうたい)を産み出すことで、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から体を守ります2)。この形質細胞のDNAに突然変異や染色体異常などによって特定の遺伝子の変異が生じると、がん化して骨髄腫細胞に変化することがあります5)。骨髄腫細胞が骨髄で異常に増えると、さまざまな症状がみられるようになります。また、骨髄腫細胞は「Mタンパク」をつくり出します。このMタンパクは役に立たない抗体(異常な免疫グロブリン)である上に、体内に蓄積することで、さまざまな症状を引き起こします2)。図2:形質細胞と抗体のはたらき[出典2より作図]【出典】1) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/table.html(2025/5/27参照)2) 神田善伸監修:ウルトラ図解 血液がん 法研:14-15, 40-41, 140, 20203) 国立がん研究センター:がん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html(2025/7/31参照)4) 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第6版 文光堂:2, 20245) Kumar SK, et al.: Nat Rev Dis Primers 2017; 3: 17046【監修】 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター 血液内科 臨床研究部長 角南一貴 先生更新年月:2025年9月ONC46P020A