多発性骨髄腫(MM)を学ぶ検査と診断初診時の一般的な検査や症状などから多発性骨髄腫が疑われる場合、詳細な血液検査と尿検査を行います。その結果によって、多発性骨髄腫の可能性が高いと考えられる場合は、骨髄検査を行い、診断を確定させます。また、全身の骨の状態や形質細胞腫の有無を調べる画像検査も行われます1-3)。図:検査の概要[出典2より作図]血液検査【検査で調べること】造血機能を調べるため、赤血球、白血球、血小板の数などを詳しく調べます1,2)。病気の進行度を調べるため、血液中のタンパクを調べます。Mタンパクの増加に伴って、総タンパク量やタンパクの一種であるβ2-ミクログロブリンが増える一方、血液中で最も多いタンパクであるアルブミンの値は低下します1,2)。骨が溶け出すことで増えるカルシウムや、腎臓の状態を表すクレアチニンなどの値も調べます。Mタンパクの型や量を調べます1,2)。【検査の方法】血液を採取し、血液中に含まれる成分を詳しく調べます。尿検査【検査で調べること】尿タンパクの量と種類を調べます。Mタンパクの一種で、患者さんの約半数にみられる「ベンス・ジョーンズタンパク(BJP)」の有無も調べます1,2)。また、腎機能の状態についても調べます1,2)。【検査の方法】24時間分の尿を容器に貯めておき、その一部を用いて調べる「全尿検査(蓄尿検査)」を行います1,2)。骨髄検査【検査で調べること】腰にある腸骨などから骨髄液または骨髄組織を採取して、骨髄腫細胞の性質や、骨髄腫細胞の表面にあるタンパク(表面抗原といいます)などを調べます1,3)。骨髄腫細胞の染色体の異常の有無と、その種類を調べます。どのような異常があるかによって、病気の悪性度などを判断することができます1,3)。【検査の方法】局所麻酔をして、専用の注射器を骨に刺し、骨髄液を採取します。この方法を「骨髄穿刺(せんし)」といいます。通常はうつぶせになった状態で、背中側から骨盤の大きな骨(腸骨)に針を刺します3,4)。骨髄穿刺で十分な骨髄液が採取できなかった場合は、骨髄穿刺より太い針を刺す「骨髄生検」が行われます3,4)。画像検査【検査で調べること】画像検査によって全身の骨の状態を観察し、骨折や骨が溶け出している箇所の有無や病変の数、大きさなどを調べます1-3)。【検査の方法】X線検査、CT検査、MRI検査、PET検査*などが行われます1-3)。*PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)検査:静脈からFDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を注射し、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を画像化する検査。がんの有無、がんの位置や広がりを高い精度で診断することができる6)。【出典】1) 木崎昌弘監修:よくわかるがん治療 血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫:114-115, 主婦の友社, 20202) 神田善伸監修:ウルトラ図解 血液がん:72-73, 法研, 20203) 医療情報科学研究所編:病気が見える 血液 第3版:21-22, 222-225, メディックメディア,20234) 国立がん研究センターがん情報サービス:白血病〈小児〉 検査 https://ganjoho.jp/public/cancer/leukemia/diagnosis.html(2024/1/25参照)5) 藤野彰子編著:新訂版 看護技術ベーシックス 第2版【電子版】 サイオ出版:431-437, 20216) 国立がん研究センターがん情報サービス:がんの検査について PET検査とは https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/pet.html(2024/2/19参照)【監修】 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター 血液内科 臨床研究部長 角南一貴 先生更新年月:2024年4月ONC46N021B