慢性骨髄性白血病(CML)を学ぶ分子標的薬の副作用

分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)、STAMP阻害薬)による治療で比較的起こりやすい副作用や、特に注意が必要とされている主な副作用について説明します。
副作用の症状があらわれたら、すぐに医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフに相談してください。

吐き気・嘔吐

吐き気や嘔吐が続いたり、それに伴って食欲の低下などが起こることがあります1)。嘔吐が続く場合は、食事を少し控えて水分をとってください。吐き気止めを処方されている場合は、医師の指示に従って服用してください。
多めの水(コップ1~2杯)とともに服用したり、食事の直後に服用することで改善できる場合があります1)

下痢

一部の分子標的薬では、服用後すぐに下痢(1日4回以上、または激しい下痢)が起こることがあります1,2)。下痢止めや整腸薬などを処方されている場合は、医師の指示に従って服用してください。また、下痢による脱水症状を防ぐため、水分や経口補水液などをとるように心がけましょう3)

皮膚の発疹

皮膚が赤くなったり、ぶつぶつができることがあります1)。かゆみ止めの塗り薬や内服薬を処方されている場合は、医師の指示に従って使用してください。
また、刺激の少ない綿素材などの肌着を着用する、紫外線を避ける、熱いお湯(40度以上)を使わない、皮膚を清潔に保ち保湿剤を塗るといった自分でできる対策もあります4)

肝機能障害

肝機能を示す検査値(ALT、ASTなど)の数値が上がることがあります1,2)。薬の服用中は定期的に血液検査を行い、数値の異常がないかを確認します1)。検査値が上昇した場合は、医師の判断で薬の量を減らしたり、一時的に服用をお休みすることもあります5)

むくみ・体重増加・胸水

体内に水分が貯まりやすくなり、急激に体重が増加したり、全身のむくみなどがあらわれることがあります。また、胸水きょうすいといって胸に水分が貯まり、咳や息苦しさなどの症状があらわれることもあります1)

筋肉のけいれん・筋肉痛

目の周りの筋肉がぴくぴくしたり、全身の筋肉痛が起こることがあります1)

骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板の減少)

下記のような症状があらわれる場合があります。自分ではわかりにくいため、定期的に血液検査を行います6)

  • 貧血:立ちくらみ、息切れ、めまい、ふらつき、頭痛、胸の痛みなどの症状が起こることがあります。無理をせず、十分な休養をとりましょう6,7)
  • 白血球(好中球)の減少:かぜなどの感染症にかかりやすくなり、発熱や咳、のどの痛みなどの症状があらわれることがあります。うがいや手洗い、マスクの着用といった感染対策をしましょう6,8)
  • 血小板の減少:出血しやすくなり、青あざ(皮下出血)や鼻血や歯ぐきの出血などが起こりやすくなります。けがや打撲をしないように気をつけましょう6,9)

肺高血圧症

肺動脈の血圧が上がることで、呼吸困難などの症状が起こる場合があります。服用を始めて数年経ってから起こる場合もあります1)

虚血性心疾患、脳梗塞、末梢動脈閉塞症

TKIの服用期間が長くなるにつれて、動脈硬化性の病気(狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞、末梢動脈閉塞症など)が起こりやすくなることが知られています。高脂血症や高血圧、糖尿病、喫煙など、動脈硬化の危険因子を持っている人は、特に注意が必要です10)

QT間隔延長

不整脈の一種であるQT間隔延長が起こることがあります。そのため、治療前や治療中は、定期的に心電図検査などを行います1)

【出典】

1) 宮崎仁:もっと知りたい白血病治療 患者・家族・ケアにかかわる人のために 第2版 医学書院:76-78, 2019

2) Hino M, et al.: Int J Hematol. 2020; 112: 24-32.

3) 国立がん研究センター:がん情報サービス 症状を知る / 生活の工夫 さまざまな症状への対応 下痢 [更新・確認日:2019年04月24日]
https://ganjoho.jp/public/support/condition/diarrhea/index.html (2024/7/26参照)

4) 静岡県立静岡がんセンター:学びの広場シリーズ・からだ編3 抗がん剤治療と皮膚障害(第9版2刷):8-9, 23-34, 2024
https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2024/04/hifu-shougai.pdf (2024/7/26参照)

5) Cortes JE, et al.: J Hematol Oncol. 2018; 11: 143.

6) 静岡県立静岡がんセンター:学びの広場シリーズ・からだ編8 抗がん剤治療における骨髄抑制と感染症対策(造血幹細胞移植を除く)(第2版2刷):4-13, 2024
https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2024/04/kotsuzui-yokusei.pdf (2024/7/26参照)

7) 国立がん研究センター:がん情報サービス 症状を知る / 生活の工夫 さまざまな症状への対応 貧血 [更新・確認日:2020年02月20日]
https://ganjoho.jp/public/support/condition/anemia/index.html (2024/7/26参照)

8) 国立がん研究センター:がん情報サービス 症状を知る / 生活の工夫 さまざまな症状への対応 感染しやすい・白血球減少 [更新・確認日:2023年08月10日]
https://ganjoho.jp/public/support/condition/FN/index.html (2024/7/26参照)

9) 国立がん研究センター:がん情報サービス 症状を知る / 生活の工夫 さまざまな症状への対応 出血しやすい・血小板減少 [更新・確認日:2020年04月13日]
https://ganjoho.jp/public/support/condition/thrombocytopenia/index.html (2024/7/26参照)

10) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版.金原出版:115-116, 2023

【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生

更新年月:2024年9月

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