慢性骨髄性白血病(CML)を学ぶ治療の目標と治療の流れ治療の目標これまで慢性骨髄性白血病(CML)の治療は、“白血病細胞をできるだけ減らし、慢性期の状態を長く維持して、移行期や急性転化期へ進行させないこと” を目指して行われていました。しかし、分子標的薬が登場したことで、多くの患者さんが寛解の状態を長期間保つことができるようになりました。その結果、現在の治療の目標は、“白血病細胞を徹底的に減らし、分子標的薬の服用をやめても寛解の状態を保ち続けること“ に変わりつつあります1)。治療の流れ患者さんの多くは慢性期の段階で診断され2)、分子標的薬(飲み薬)による治療を開始します1)。①治療薬の選択現在のCML治療の中心となっている分子標的薬が、チロシンキナーゼ阻害薬です。“TKI(ティーケイアイ)” という略称で呼ばれることもあります。TKIにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴的な副作用が異なります。そこで、患者さんの年齢、CML以外の病気、服用方法、薬剤費などから、どのTKIを服用するかを相談して決めます1,3)。②副作用があらわれた場合、十分な効果が得られなかった場合副作用があらわれた場合は、医師の判断で飲む量を減らしたり1)、一時的に服用をお休みします。副作用の種類や程度によっては、別の飲み薬(別の種類のTKI、または作用の異なる飲み薬)に変更することもあります4,5)。また、十分な効果が得られなかったり、薬が効かなくなってきた場合も、別の種類のTKIや、作用の異なる飲み薬への変更が検討されます1)。③長期にわたって治療効果を維持できた場合数年間TKIの服用を続け、長期にわたって「深い分子遺伝学的奏効」と呼ばれる治療効果(詳しくは治療効果の判定をご覧ください)を維持できた場合は、医師と相談の上でTKIの服用を中止する場合があります。ただし、いずれは白血病細胞が再び増えてくることも少なくないため、定期的に医療機関を受診し、検査を受ける必要があります1)。もし白血病細胞が増えてきた場合には、TKIの服用を再開します。④病気が進行してしまった場合多くの患者さんは、TKIによる治療で慢性期の状態を維持することができますが、進行してしまった場合には、TKIに化学療法を併用したり、造血幹細胞移植を行う場合があります1)。※造血幹細胞移植について詳しく知りたい方は、急性骨髄性白血病(AML)のページの解説をご覧ください。症状もないし、医療費を払うのも大変です。本当に治療しなくてはだめですか?職場の健康診断などで白血球の増加が見つかって医療機関を受診し、CMLと診断されるケースが多々あります。こうした患者さんの多くは自覚症状がないため、高額で副作用が起こるかもしれない薬を服用することに、抵抗を感じるのもわかります。しかし、治療を受けずにほうっておくと、急性転化し命にかかわる可能性があります3)。その一方で、適切な治療を続ければ、一般成人と同じぐらいの平均寿命が期待できることが明らかになっています6)。また、自己判断で薬の量を減らしたり服用をやめたりすると、十分な効果が得られないという研究結果もあります7)。副作用が心配な場合や、副作用の症状で困っている場合は、遠慮せずに医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフに相談してください。高額な治療費を補助する制度もあります。詳しくはこちらのページをご覧ください。治療費と生活の支援制度【出典】1) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版.金原出版:100, 106, 119-121, 20232) 医療情報科学研究所編:病気がみえるvol.5 血液 第3版 メディックメディア:173, 20233) 宮崎仁:もっと知りたい白血病治療 患者・家族・ケアにかかわる人のために 第2版 医学書院:62-63, 79-80, 20194) Hochhaus A, et al.: Leukemia 2020; 34: 966-845) National Comprehensive Cancer Network: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology – Chronic Myeloid Leukemia Version 2. 2024 (December 5, 2023):CML-3, 5https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/cml.pdf(2024/7/26閲覧)6) Bower H, et al.: J Clin Oncol. 2016; 34: 2851-57.7) Marin D, et al.: J Clin Oncol. 2010; 28: 2381-88.【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生更新年月:2024年9月ONC46N018B